ついにVR空間に自分の書斎を持てる時代がやってきた。
仮想空間内で自分好みのアバターを身に纏い、他者と交流するソーシャルサービス「VRChat」内で「青空文庫」を読めるシステムが開発されたのだ。
この青空文庫システムを制作したのはスズ製作所・スズキさん(@suzuki_ith)。
青空文庫システムをVRChat ワールドに配置すると、青空文庫で公開されている作品のうち、著作権が切れているもので、文章形式に問題がない16082冊の本を読むことができる。
実際に青空文庫システムを使用したユーザー達からは
「青空文庫ワールド、味気ない”電子の読書”が、本来のふくよかな時間を取り戻したかのようで、とても良かった」
「青空文庫の最近気になった作品読めるし自分の好きな作品と写真撮れるしもう最高」
「コロナで書店も図書館も遠のいてたので立ちながら本をパラパラめくる感覚が懐かしくてとても”良かった”」
など数々の絶賛のコメントが寄せられている。
スズキさんにお話を聞いてみた。
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筆者:青空文庫システムを制作されたきっかけについてお聞かせください。
スズキ:制作のきっかけは、別のプロジェクトの進行中に副産物として作成したことでした。最初はルビもなく操作感もイマイチだったのですが、他のユーザーから意見を頂いて改良を重ね、想定していたより良い出来となりました。
筆者:読書好きとしてはVR空間で本が読めるなんて夢のようで、青空文庫システムを見た時は本当に胸が躍りました。
青空文庫システムの魅力はどういったものでしょうか?
スズキ:まず、好きな場所で本を読むことができる点です。VRChatワールドにこのシステムを導入すれば、自分の理想の場所で本を読むことができます。
例えば、雨の日に家の中で雨音を聞きながら。例えば、夕焼けに照らされた電車に揺られながら。例えば、朝マズメの湖で釣りをしながら。VRChatには既に沢山の人々が各自の理想の世界を作っていますから、本に合った世界で読書をするのも面白いかもしれません。
また、人と一緒に読めるのも魅力です。人と一緒に本を読む、というのは簡単そうでなかなか難しいものだと思います。ここでは同じ本を読んで感想を言い合ったり、以前読んだ本を人に勧めたりできます。朗読なんかも良いかもしれませんね。
他にも、体験としての読書という点にこだわりました。並べられた本の背表紙を見て本を選び、手で持ちます。本を開く音、ページをめくる音、閉じる音がします。自分以外のユーザーの操作音も聞こえるので、静まり返った空間ではページをめくる音だけが聞こえます。単純に文字列をデータとして読み取るだけではない、体験としての読書ができるのは魅力だと思います。
筆者:SNS上では青空文庫システムを使用したVRChatユーザーから数々の絶賛の声が寄せられています。今回の反響へのご感想をお聞かせください。
スズキ:実は、私の他の創作物に比べるとまだまだユーザーが少ないのが現状ですが、読書好きなVRChatユーザーからは長らく待ち望まれていた機能だったようで、VR空間内でわざわざお礼を言いに来てくれた方もいらっしゃいました。また、他のワールドに組み込んで頂いたりもしています。
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スズ製作所 スズキさん関連情報
Twitterアカウント https://twitter.com/suzuki_ith
BOOTH https://suzufactory.booth.pm/
青空文庫システム以外にも、卓球台、釣り竿、麻雀卓など、VRChatワールドで使用できるギミックを販売
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青空文庫システムを実際に使用しているふぇでぃさん(@Xmanji3)にも、ご感想を伺ってみた。
ふぇでぃ:作品名検索、著者名検索の二通りの検索方法があり、簡単に目当ての作品を読むことができました。自分もよく知る現実世界の名作をVR上で読むと、現実とVRが交錯するような、何とも言えない不思議な感覚を覚えました。実際にその場にいるような気分を味わえるVR機器ならではの感覚ですね。リアルで持っていない作品を気軽に読めるので、気になる作品が出てきたらまた利用させていただきたいです。
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リアルさながらのコミュニケーションが行えるのが魅力のVRChatと、バーチャル空間で読書ができる青空文庫システムは、仮想空間での読書会や朗読会など新たな読書体験を創出しつつある。自分の好きな本をその本にあった世界で読んだり、読書家にとって最高の贅沢ではないだろうか。VRユーザー以外にとっては導入のハードルは高いかもしれないが、ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。