切り絵御朱印が大ブーム「競合は映画館や商業施設」火付け役が明かす寺社存続の新戦略

 寺社を参拝した記念に御朱印を集める〝御朱印巡り〟ブームが続く中、近年では鮮やかな見た目の「切り絵御朱印」が流行している。切り絵御朱印の火付け役で寺社仏閣のコンサルティングを手掛ける株式会社ELternalの代表・小久保隆泰氏は「競合は寺社仏閣ではなくて映画館や商業施設」と、理想の寺社仏閣のあり方を語った。

 小久保氏は切り絵御朱印を、自身が代表役員を務める埼玉厄除け開運大師・龍泉寺(埼玉県熊谷市)に導入。「駅から徒歩で40分もかかるような厳しい環境」にある同寺の参詣者を増やすために「今までにない御朱印を」との考えから、切り絵のデザインをあしらった御朱印を発案した。切り絵御朱印の開始前は1カ月あたりの頒布数が「30枚くらい」だったという御朱印だが、現在は「1万枚を超える」ほど人気があるという。

 同寺は参詣者のタイプに合わせた2種類の御朱印を季節ごとに制作している。参詣の記念として御朱印を集めている「だいたい40代~50代の女性の方」を「コアな御朱印ファン」、SNSで御朱印を見つけた「20~30代」で「そもそも御朱印だとわかっていない」層を「ライトなファン」として、それぞれに向けたデザインを用意しているという。「2種類を作ることでコアなファンの方も訪れてくれますし、御朱印を知らない、ライトなファンの方も訪れてくれるかたちに戦略的にお作りしています」と意図を明かした。

 数々の寺社がブランディングに注力し差別化を図る背景には、経営的な課題がある。小久保氏によると「(全国の)寺社仏閣の4割が年商ベースで300万以下」、「(今後)20年以内に40%の寺社仏閣が消滅する」とも言われているといい、檀家の減少や葬儀の簡素化などの影響もあり「経営をして行くことが困難になってしまう」寺社があるという。小久保氏は「今まで来ていただいた方だけではなくて、今まで来られなかった方、興味がなかった方々にいかに寺社仏閣に来ていただくかというのが大事だと思う」と話し、御朱印などをきっかけに「寺社仏閣のファンを作っていくことが、うちだけではなく日本の寺社仏閣にとって重要なのかなと思います」と力を込めた。

 さらに、理想とする寺社のあり方として「初詣や法事の際だけに訪れるのではなくて、休日に家族で『何しようか?お寺行こうよ、神社行こうよ!』となった方がいいと思うんです」とも語った。「競合は寺社仏閣ではなくて映画館や商業施設、カフェなんです。こういったところに行くのではなくお寺に行こうよ、と思ってくれるくらい生活の中に馴染んでくる存在になってもらいたい」。「僕らは他の寺社仏閣さんを競合だとは思っていないので。特にELternalは『寺社仏閣とともに』というのを大事にしている会社なので、全体として寺社仏閣業界が盛り上がってくれればいいなと思っている」と期待を口にした。

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