子供の頃、家族で百貨店やデパートに出かけると、屋上にある遊園地で遊んだ思い出がある人も多いのでは。最近は施設の老朽化、維持するためのコストや人員の問題、郊外の大型ショッピングセンターの盛況、レジャーの多様化などで年々減少。ほとんど見かけることもなくなり、長崎の老舗百貨店は5月6日で営業終了を発表している。
もはや希少な屋上遊園地だが、その一つが大阪府高槻市の松坂屋高槻店に存在する。1979年の開業当時から営業。現在もゴーカート、レールを走る汽車、定置式の乗り物、クレーンゲーム機など計82台を設置して、来場者を楽しませている。小銭を入れて動く乗り物などを眺めていると、50代の記者は懐かしさを感じた。
メンテナンスを重ねながら、10年、20年と使い続けている遊具もある。30年使用されているパトカーの乗り物はデザインこそ古い感じだが、車体はキレイに磨かれ、手入れが行き届いている。「定期的に入れ替えることはないですが、故障して直る見込みがないものは入れ替えをします」と説明。コロナ禍で閉鎖となった時期でも、傷まないように遊具のメンテナンスは行ってきた。
取材は平日の午前中の時間帯でもあったこともあり、人影はまばらだったが、季節によっては土日祝に平均300人、ゴールデンウイークや秋などのベストシーズンには1日平均500人ほどが訪れる。開業して45年を迎えても親子連れや祖父母と孫など、昔から客層はあまり変わらないそうだが、担当者は「最近はインスタとかに上げるのか、写真を撮りに来られる学生さんや若い人が増えているように思います」と〝映えスポット〟として訪れる人もいるそうだ。
最近は多くのメディアでも取り上げられるようになり、再び注目を集めている。「各地の遊園地がバブル崩壊後に次々と閉鎖して、小さな子どもさんたちが遊べる遊園地が減っている中、『昭和なレトロ感と安全・安心な遊園地』という事で再認知されて新しいお客さまの来場が増えているように感じます」。地元だけでなく、遠くから訪れる人もいるなど認知度はアップ。売り上げもコロナ禍以前と比較して倍くらいになった。
小さな子どもからお年寄りまで、あらゆる世代から愛される屋上遊園地。担当者は「お客さまが『家族とまた来たい!』と思っていただく事や『笑顔で楽しく遊んでられるお客さまの姿』のために、できるだけ長く維持していきたいと思っています」と前を見据えていた。