電車内の2人掛け座席で、窓側が空いているにもかかわらず通路側に座る乗客の姿を見かけることは少なくない。この光景を見るたびに筆者は「なぜ窓側に詰めて座らないのか」とモヤっとした気分になる。
通路側に座る人が窓側に詰めて座れば、スムーズに座れるのにと腹立たしい気持ちになるのだ。時には「窓側に詰めない方が悪い」と思いながら、多少強引に窓側の席にすわることもある。さすがにこれは筆者が心が狭いのだろうかとも思っていたのだが、周囲に聞いてみると同じような気持を抱いている人もいるようだ。
実際に筆者の周囲では「窓側に詰めずに座席を占領するなんて意地が悪い」や「窓側に座りたかったら声をかけろって威張っているようで嫌」といった声が聞かれた。なかには「声をかけて窓側に座ろうとすると、明らかに嫌そうな顔で睨まれた」といった経験を話す人もいた。
一方で「次の駅で降りるので出やすいように窓側に座っている」や「窓側に座ると圧迫感を感じ、息苦しくなる」などの、通路側にあえて座る理由があるという意見も散見される。
また、筆者のように通路側に座る人にモヤっとした気分を抱えている人に対し、「声をかけるだけで済むのでは」と投げかける人もいた。確かにその通りなのだが、筆者のように座りたいけれど声をかける勇気がない人も少なくないだろう。
電車という限られた空間では、通路側に座る人は周囲への影響を考え、座席を求める人は相手の事情を想像する余裕を持つというような、乗客同士の配慮と理解が不可欠だ。そうした相互理解が深まれば、より快適な車内環境を作り出すことができるはずだ。
次に電車に乗る機会があれば、窓側が空いているのに通路側に座っている人を見かけても、単純に「マナーが悪い人」と決めつけず、さまざまな可能性を想像し周囲への配慮を忘れないようにしたい。それが限られた公共空間を共有する私たちの責任なのではないだろうか。