「子どもに課金して、クソ強いキャラに育てよーとして何が悪い。課金ゲー上等!!」と叫んだのは、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載し、テレビドラマ化もされた人気漫画『二月の勝者』(作:高瀬志帆)に登場する中学受験生の母親だった。このインパクトのあるセリフは、多くの中学受験生の親の心に響いたのではないだろうか。
それもそのはずで、株式会社モデル百貨が中学受験を経験した保護者500人を対象に実施した調査によると、中学受験で通塾した場合の総額平均は約180万円という結果が出ている。実際に中学受験に向けて、子どもを個別塾に通わせたりや家庭教師をつけると軽く200万円はこえてしまう。
このように、中学受験には『二月の勝者』でのセリフの通り、かなりの費用がかかってしまうケースが多い。そんななか自宅学習のみで中学受験を合格する家庭も存在している。じつは筆者の家庭がその一例だ。
筆者の家庭では3人の子どもがおり、長男(現在高校1年生)は塾を利用せず自宅学習のみで中学受験を成功させている。そこで、実際に2022年に塾なし中学受験をした長男の教育費用はいくらかかったのか、その概算を公開しよう。
まずは問題集などのテキスト代だ。テキストには小4から小6までの3年間で約12万円費やしており、費用内訳の中でもっとも大きなウエイトを占めている。長男は一般的な書店で販売している予習シリーズのテキストを主に使用していた。
次に模試の受験料だ。模試を受けることで、現時点での実力(偏差値)を知ることができるためだけでなく、子どもに受験がどんなものか体験してもらうためにも重要だと考え、数回受験している。この費用は約7万5千円だ。
さらに小6の後半に利用した、保護者向け月1回のオンライン学習相談が4万5千円。そして忘れてはならないのが、実際に受けた私立中学校の出願料の約10万円だ。その他、交通費や文房具代など細かな出費を含めると、全体として約50万円使っていたことが分かった。
この金額を3年間の月平均で計算すると約2万円となる。これくらいの費用なら、子どもの習い事で支払っている家庭は珍しくないだろう。決して安くはないが、工夫しだいでは中学受験が現実的な選択肢になりうる数字だといえる。
筆者が自宅学習のみで受験を乗り切るために一番意識したのは「本当に必要なものだけを選ぶ」ことだ。例えば苦手な国語は最低限の実力を備えることを意識して応用問題集は購入せず、模試の受験回数を5年生までは半年に1回程度に留めた。
ただし削りすぎには注意が必要だ。節約を第一に考え、どんどん切り捨ててしまうと、後に受ける模試で理解不足だった教科や内容が発見され、後戻りをして勉強することになり余計にお金がかかる場合もある。
また、塾で教えてもらう費用を節約したかわりに、筆者や夫が教育に多くの時間を費やすことができたのも、受験合格の要因だったといえる。この当時はコロナウイルスの蔓延により、夫がフルリモート勤務だったため時間が捻出できた。もしもこの時間を捻出することができなければ、塾なしを断念していたかもしれない。
このように、中学受験を乗り切るための勉強には約200万円必要な場合もあるが、約50万円で完結する場合もある。この事実を知ることで、費用の負担や近隣に塾がないといった理由で通塾が難しい子どもたちでも「中学受験に挑戦する」という選択肢を増やすことができるのではないだろうか。