満席の新幹線 列車を間違えた老夫婦が自分の指定席に座っていた!席を譲るべきか…識者が考える魔法の言葉

石原 壮一郎 石原 壮一郎
画像はイメージです(moonrise/stock.adobe.com)
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 年末年始は帰省や旅行などで長距離移動する人も増える。その交通機関で、自分の指定席に高齢者が先に座っており、他に空席がない場合、どう接するべきだろうか。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対策を提言した。

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 【今回のピンチ】

 満席の新幹線。自分たちの指定席に老夫婦が座っている。チケットを見たら列車が違っていた。悲しそうに「じゃあ、私たちはどこに座ればいいんだ」と呟(つぶ)やいている……。

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 年末年始など満席の新幹線では、さまざまなトラブルが発生します。多いのが自分が取った指定席に、ほかの人が座っていたというパターン。もちろん、自分がうっかり間違える可能性も大いにあります。

 帰省の際に夫婦で新幹線に乗ったら、自分たちの席に老夫婦が座っていました。切符を確認したら、相手が乗る列車を間違えたようです。すぐに「あっ、申し訳ない」と謝って立ち上がってくれましたが、夫が妻の顔を見ながら「じゃあ、私たちはどこに座ればいいんだ」と悲しそうに呟いています。

 「そんなこと言われても……」という状況ですが、新幹線はすでに発車していて、あと1時間以上は停まりません。こっちに非はないんですけど、老夫婦を立たせることになり、じつに後味が悪い状況です。降ってわいたピンチにどう立ち向かえばいいのか。

 老夫婦を立たせるのは忍びないからと、「よかったら、そのまま座っていてください」と席を譲るのは、さすがに人が良すぎます。仮にそう提案しても、相手だって「そうですか。それじゃあ」とは言わないでしょう。

 かといって、「こっちの知ったこっちゃない」と呟きを無視して、ムッとした顔で席に座ってそのまま老夫婦を遠ざけるのは、大人として極めて情けない対応です。知らん顔するのが「正解」だと迷いなく言える人もいそうですけど、寂しい発想だし、総合的には「損」な考え方と言えるでしょう。

 目の前にいるのは、きっと慣れない遠出で乗る列車を間違えて、困った状況になっている老夫婦です。袖すり合うも他生の縁。どうにか助けてあげようと自分なりにがんばることで、後味の悪さを最小限に抑えられます。

 とはいえ、できることは多くはありません。まずは「困りましたねえ。どうにかならないかなあ」と、力になりたいと思っている姿勢を伝えましょう。その上で、車掌さんを探しに行って、事情を説明します。

 奇跡的に席が見つかれば、それでよし。荷物が多いようなら、移動を手伝ってあげましょう。車掌さんが「とりあえず、こちらへ」と別の車両に連れていった場合は、見送りつつ「なんか申し訳ありません。お気を付けて」ぐらいのことは言いたいところ。こっちは悪くないのに謝ることによって、スッキリした気持ちで席に座ることができます。

 超満員で車掌さんもどうにもできず、老夫婦はそのまま自分たちの席の近くにいるしかなく、しかも立っているのがかなり辛そうだとしたら……。その場合は、ちっぽけな権利意識に縛られて座り続けているより、いっそ席を譲ったほうが「楽」かもしれません。

 「人助けをする気持ちよさを味わうチャンス」と思いつつ、どうにか説得して座ってもらうことで、善行を積んでしまうのも一興です。きっとその分、ラーメンを食べたらチャーシューが2枚重なっていたなど、ラッキーな出来事がある……と信じましょう。

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