手塚治虫文化賞「プリニウス」ヤマザキマリ氏は息子の祝福に満足、とり・みき氏は手塚ギャグの影響語る

山本 鋼平 山本 鋼平
ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス」(新潮社)の書影
ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス」(新潮社)の書影

 漫画家のヤマザキマリ氏、とり・みき氏が6日、東京・築地の浜離宮朝日ホールで第28回・手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式に出席。合作「プリニウス」(新潮社)が年間のベスト作品を表彰するマンガ大賞に輝いた。

 世界史的名著「博物誌」を著し、79年のヴェスヴィオ火山噴火の影響で逝去した博物学者・プリニウスの生涯を描く。古代ローマの風景や生活から、皇帝ネロや名将コルブロといった人物まで、史実をもとにしながら自由な想像力と圧倒的な画力で2000年前の世界を描く歴史伝奇ロマン。他ではあまり見られない「マンガ家同士の合作」というスタイルを採用、その意味でも貴重な作品となった。

 ヤマザキ氏は2010年に「テルマエ・ロマエ」で同賞短編賞を受賞。再びローマを主題とした作品で受賞を果たし「古代ローマの力が私に働きかけているのではないか」と感慨を口にした。1980年代後半に画学生としてイタリアに留学し、現在も半分を同地で暮らす。今作に関しては、天災の多い地で生まれたプリニウスに共鳴したことが、作品に反映されたと振り返った。「14年前は手塚文化賞を取ったときに、私の息子から電話で一言、『え~、あんな漫画でそんな賞を取ったの』と言われました。今回は素直に喜んでくれました。非常に満足しています」と話し、会場を笑わせた。

 とり・みき氏は冒頭で「本日は令和6年6月6日という、不吉な日に皆さんご参集いただきまして、ありがとうございます」と会場を笑わせつつ、手塚治虫からの影響を口にした。幼年時に「大洪水時代」と「太平洋X點(ポイント)」に感銘を受けたといい、持ち味のギャグでも「手塚さんのちょっと楽屋オチ的な、メタ的なギャグ、物語自体を外側から見るようなギャグに感化されました」と振り返った。「漫画家になる時、少年誌の漫画賞の選考委員にも手塚さんがおられた。こういう場に立たせてもらい、幼稚園時代から呪いをかけられてるようで、ものすごく感慨深いものを感じます。ヤマザキさん同様、手塚治虫さんにも『ありがとう』と申し上げたいです」と感謝を口にした。

 同賞の新生賞は坂上暁仁「神田ごくら町職人ばなし」(リイド社)、短編賞は益田ミリ「ツユクサナツコの一生」(新潮社)、特別賞は発足40年を迎えたコミティア実行委員会(吉田雄平代表)が輝いた。 

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