今や日本だけでなく、世界中で人気を集めている「Vtuber(バーチャルYouTuber)」。一ファンとして日本で行われた人気ライブに参加し、言葉も通じない異国の地で奮闘した人の行動と、その後のエピソードに感動が集まっている。
事の発端は2025年3月8日、9日に千葉・幕張メッセで開催された、大手Vtuber事務所「ホロライブ」の6周年記念ライブ「hololive 6th fes.」でのこと。普段は台湾で暮らすCuRさん(@COO55R)は、地元・台湾で開催されたホロライブのライブイベントに参加し、その熱量に圧倒され「『絶対に日本でライブに参加したい』と強く思い、その夢を叶えるため、今年ついに初めて日本へ来て、この年に一度の大イベントに参加しました。」と決意し、日本でのライブに初参加した。
当日も念願の日本でのライブを楽しんでいたが、熱狂するライブ中、観客席に異変が。台湾で「消防士」として働くCuRさんは嫌な予感がしたといい、すぐに現場にかけつけたという。そこでは推しのライブで過度に興奮してしまったファンが倒れており「周囲の人々もその方の状態を心配していました。私はすぐに駆け寄り、声をかけましたが、反応がありませんでした」とその当時を振り返り、「頸動脈の脈を確認したところ、まだ脈があり、命に別状はないと判断したため、CPR(心肺蘇生法、呼吸が止まっている人に心臓マッサージなどで脳へのダメージを最小限に抑えるための救命措置)は不要と判断しました。」と即座に決断。周囲の観客と協力し、倒れたファンを車椅子に乗せ、スタッフの方に引き渡したという。
ライブが終わり、帰国してすぐにX(旧ツイッター)で発信したのは「救護したファンの安否」。幸いにも、すぐに当該ファン本人からXを通じて無事であることを伝え聞き、「無事に退院されたと知り、心から安堵しました」と笑顔。ライブ現場やネット上では、普段慣れない日本語でのやりとりだったが「私はもともと日本が大好きでしたが、この出来事を通じて、さらに好きになりました。皆さんは、見知らぬ外国人である私にも温かい言葉をかけてくださいました。そして、倒れた観客の方を見た際、多くの方がライブを観る時間を惜しむことなく、迷わず助けに駆けつけていました。このような優しさと助け合いの精神こそが、私が日本を好きな理由の一つです」と振り返った。
物語はここで終わらない。多くの人が集まっている会場、そのなかで必死に救護活動をしていたCuRさんは、持参していた推しのペンライトを紛失した。だが後日、ホロライブ公式から「ペンライトを補填したい」と連絡が。実際に荷物を開けてみると、紛失したペンライトだけでなく、多くのグッズが同梱されていた。「ペンライトだけでなく、EXPO関連のグッズや、感謝状まで丁寧に用意されていました。こんなにも温かい対応をしていただき、感激のあまり言葉を失いました」と当時を振り返った。
異国の地で遭遇したこの一連の出来事について、CuRさんは「正直、これほど大きな反響があるとは思ってもいませんでした」と話す。「私は普段の仕事でこのような場面に遭遇することが多く、いわば日常の一部のように感じていました。しかし、皆さんが温かい言葉をかけてくださるたびに、嬉しい反面、少し照れくさい気持ちにもなりました(笑)」と話し、「これこそが、私がこの職業を選んだ理由なのかもしれないです。皆さんの『ありがとう』の笑顔が、私にとっては何よりの報酬です」と自身の職業に誇りを感じたことも明かしてくれた。