バスが線路を走るなんて前代未聞!四国の徳島県海陽町と高知県東洋町を結ぶ阿佐海岸鉄道ではDMV(デュアル・モード・ビークル)方式を使って線路の上をバスが走っている。DMVとは線路と道路のどちらも走行できるよタイプの車両のこと。JR北海道が開発し、2004年に試作車を完成させた。その後、阿佐海岸鉄道が導入を決定し、2021年12月25日から世界で初めての本格的営業運行が開始された。
阿波海南文化村―阿波海南駅はバスモードで道路を走り、阿波海南駅―甲浦駅は鉄道モードとしてレールの上を運行、甲浦駅―道の駅 宍喰温泉は、再びバスモードとして道路を走る。なお、阿波海南駅ではJR牟岐線と接続しており、乗り継ぎもスムーズに行える。
実際に鉄道区間の海部駅から乗車した。ホームは普通の列車より一段低く、バスの高さに調整されている。駅は高架になっており鉄道時代の活気は今でも息づいている。窓口や駅のホームは鉄道時代現役当時のまま残されており、列車が走っていた頃に思いをはせる。
ホームに上がると、過去に宮崎県を走っていた高千穂鉄道の車両、ASA-101の車両が歴史を象徴するかのように今も眠っている。ASA-101を見学しているとDMVがミニトンネルを抜けて入線してきた。トンネルの高さに対してバスが小さく、かわいいので見た感じはおもちゃの鉄道の世界に誘い込まれたようだった。
さっそく、乗車すると運賃箱があり、やはりバスだ。エンジン音が高鳴りゆっくりと動き出す。レールの上を走っているのだが、列車とは違う車体の軽さを音で感じた。
トンネルを抜け、左手に海を見ながら高架の上を線路をゆっくりと進んだ。15分ほどで甲浦駅に到着すると、鉄道モードからバスモードに変換。地元の和太鼓のBGMとともに車輪が線路から離れる。モードチェンジの際は運賃表示機に画面が表示され、前輪と後輪が線路から離れる様子がよく分かる映像が流れる。『ガチャン』の音と振動の後車両が線路から離れ、バスモードに変換される。線路から道路のスロープを下り甲浦駅に到着。以前存在した駅ではなく路上にあるバス停に到着する。
そもそもなぜこのような運行形態になったのか…。阿佐海岸鉄道では1988年に第3セクターの鉄道として運行を開始したが、深刻な過疎化の影響で鉄道事業を廃止せざるを得ない状況になり、2020年の11月30日に廃止され、その後、代行バスによる運行が始まった。その後、世界初による知名度拡大と地域発展を目的として2021年からDMV方式での運行がスタート。実際に乗車してみて、列車とバスを乗り継ぎなしで運行できる事は最大の利点に感じた。
また、土日祝日限定で12時2分に阿波海南駅を出発する143便は室戸岬を経由して海の駅 とろむまで向かう。室戸岬までの観光がてらに乗車してみてはいかがだろうか。
座席は全席指定でバス予約サイト発車オーライネットもしくは宍喰駅での事前の予約が必要となっている。詳細は阿佐海岸鉄道のホームページで。