相続法が改正 配偶者が亡くなったあとの居住権はどうなるのか?

平松 まゆき 平松 まゆき
写真はイメージです(polkadot/stock.adobe.com)
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 相続法改正によって新しく創られた制度について解説します。

 ひとつは「配偶者居住権の創設」(民法1028条)です。

 例えば一家のお父さんが亡くなった場合、遺族が平和に話し合って遺産分割がなされることが理想です。お母さんにはそのままお父さんと暮らした家に住んでもらい、お父さんが残した預貯金をお母さんと子供たちで分ける。こうしたやり方が一般的だと思われている方も少なくないでしょう。しかしながら、家族の形は様々です。いつなんどきも、当然にお母さんがその家に残ることができるとは限りません。

 民法も、改正以前は、配偶者の死亡により残された他方配偶者がそれまで住んでいた家で暮らすためには、遺産分割により建物の所有権を取得するか、賃借権の設定を受けることが必要でした。しかし、前者では、建物を取得するならば、その価値に見合った他の遺産(預貯金等)は手放すという理屈になってしまいますし、後者の場合には、それまで不要だった賃料の支払をしなければならないという不都合がありました。

 そこで民法が改正され、残された配偶者の居住権の保護が図られるようになったのです。令和2年4月1日以降に発生した相続からこの権利が認められます。

 もうひとつは「特別寄与制度の創設」(民法1050条)です。

 前回、「特別縁故者」について解説しました。他に相続人が一人もいないなら、義理のお父さんの介護に尽くしたお嫁さんに遺産を分けてあげようという制度でしたね。これと似て非なるものとして、改正法は「特別寄与者」という制度を設けました。この制度も亡くなった方に対する療養看護等に努めた者に対し、その貢献(寄与)に応じた額の金銭の支払を請求できるというものです。

 いずれの制度も、相続人以外の人が遺産の分与を請求できる制度ですが、「特別縁故者」は親族でなくてもよいが相続人が1人もいない場合に限られるのに対し、「特別寄与者」は被相続人の親族(六親等内の血族、三親等内の姻族)からの請求に限られるという点で両者には大きな違いがあります。令和元年7月1日以降に発生した相続からこの権利が認められます。

 さて、今回ご紹介した制度以外にも、相続法分野では近年大きな改正がありました。お困りの場合は是非お近くの弁護士に相談してください。

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