浮気をした張本人が離婚請求をしても認められるのか、最高裁の判例は?

平松 まゆき 平松 まゆき
写真はイメージです
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 「浮気をして妻(夫)とは夫婦関係が完全に冷めてしまったから申し訳ないとは思うが離婚をしたい」というご相談を受けることがあります。

 この場合、相手が離婚に合意しているなら、あとは離婚条件(慰謝料や財産分与)の話になります。では、相手が離婚に合意しない場合どうなるでしょうか。離婚の原因を作った張本人からの離婚は認められるのでしょうか。

 夫婦関係の破綻について、主な責任がある一方当事者のことを「有責配偶者」と言います。最高裁は1987(昭和62)年にこの問題について、(1)別居が相当の長期間で、(2)未成熟の子が存在しない場合には、(3)特段の事情がない限り、有責配偶者からであっても離婚請求できるとしました。

 (1)の別居期間については、解説書などには6~8年は必要としているものがあります。最高裁の事例では別居後30年経っていますので、たしかにそれなりの期間が必要だと思われます。

 (2)は「未成年」と同義ではありません。「未成熟」とは親の監護を必要とする子のことですから、仮に成人に達していても未成熟と捉えられることもあるでしょうし、逆に未成年でも自立しており成熟していると捉えられる場合もあるでしょう。

 (3)特段の事情はケースバイケースですが、相手が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に追い込まれるか、を考慮します。離婚後の妻(夫)の状況を考えると、いくらなんでもかわいそうすぎるやろ、という場合には離婚請求が認められないというわけですね。結局はここに尽きるような気がします。

 ご相談者の中には、ご自身を有責配偶者であると認め、日々淡々と時を過ごし、離婚のために別居期間を長引かせている方もおられます。しかし既述のとおり、この条件を満たすだけでは離婚請求は認められません。

 反対に、有責配偶者と死んでも離婚しないという方もおられますが、既述の判例からすればたとえ不貞の被害者であっても絶対に離婚しないままというわけにもいきません。

 それぞれの立場から将来を見据えて、一度お近くの弁護士に相談するとよいでしょう。

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