「南方熊楠が発見したアオウツボホコリと出会いました」謎多き生命体・粘菌のレア種画像が話題に

あんどう美紗子 あんどう美紗子

「南方熊楠が発見したアオウツボホコリと出会いました。かなりレア種で死ぬまでに一度見つけたいと思っていた粘菌です」

動物でも植物でもない謎多き生命体、粘菌。そのレア種であるアオウツボホコリの写真がSNS上で大きな注目を集めている。

この写真を投稿したのはマメホコリ工房・粘菌愛好家の片岡祥三さん(@kataoka5233)。

ウツボホコリの青い種は大変希少で、今回の発見は奇跡と言っても過言ではない。アオウツボホコリの神秘的な美しさにSNSユーザー達からは

「こんな子もいるんですね!びっくり。美しい色ですね」
「すんごいです。これはめでたい。幸せになれましたね」
「南方(熊楠)さんが引き合わせてくれたのかも、運命的!」

など数々の絶賛のコメントが寄せられている。

アオウツボホコリについて片岡さんに話を聞いた。

筆者:アオウツボホコリとはどういった粘菌なのでしょうか?

片岡:アオウツボホコリは、粘菌の研究者としても有名な南方熊楠が発見した粘菌です。ウツボホコリの仲間は、赤、白、黄、そして青色の仲間がいます。

赤白はよく見かけますし黄色も割と見つかりますが、青になると極端に発見例が少ないです。なぜ発見例が少ないかはよくわかっていません。

今回見つけた青いウツボホコリは、研究者や粘菌好きの間でも一生に一度は自分で見つけてみたいといわれる種です。南方系といわれ西日本での発見例がありますが、近年では気候変動により発見範囲は北の方へと広がっているのではないでしょうか。

粘菌の子実体はとても小さく脆いものです。風や雨などですぐに潰れてしまうために、発生したその時間にそこに居ないとなかなか会えません。それが希少種ならば更に難しく、まさに一期一会です。また、発見例が少ないことからその生態も詳しく分かっていないので、見つけるには観察頻度と運しかありません。

筆者:今回の発見は粘菌愛好家冥利に尽きますね。発見時の状況をお聞かせいただけますか?

片岡:お盆の頃から降り続いた雨が上がり、久しぶりに晴れたのが8月23日。粘菌は雨が上がって数日後あたりがねらい目なんです。アメーバ状の変形体、そして子実体がたくさん見つかる絶好の日だと親子三人でいつもの大阪府吹田市の公園に出かけました。

我が家では、現在中学1年生の長男と小学3年生の次男とぼくの三人で、6月頃から12月頃の間の休日は粘菌を探しに行く生活をかれこれ7年ほどしているんです。

この日は、ツノホコリ、マメホコリ、イタモジホコリ、ムラサキホコリなど、予想通りたくさん見つかりました。いつものコースを歩いていると、以前、ヤリミダレホコリという粘菌を見つけた切り株のところに来ました。長男が「去年この切り株でヤリミダレホコリが出たな」と顔を近づけて切り株をのぞき込んだので、その裏側をぼくが何気なくのぞき込んだ時に青いものが見えました。

森の中で青いものは目立ちます。青いカビや小さな青いキノコもいます。しかしこの時は一瞬でわかりました。スポンジのような佇まい。いつも見ているウツボホコリ(赤色)のフォルム。そして鮮やかな青い色。「あっ!」と声を出した瞬間、次男がのぞき込み「アオウツボや!」と声をあげました。そこからはよくわからない言葉を言いながら三人で大喜び、ハイタッチをして何度もアオウツボホコリを見ていました。

筆者:親子で粘菌を探しに行く生活、とても素敵ですね。今回のご投稿に対し数々の絶賛のコメントが寄せられていますが、反響へのご感想をお聞かせください。

片岡:ぼくは子供と一緒に粘菌の観察を続けてきました。家では粘菌の変形体を飼育して毎日お世話をして楽しんでいます。

粘菌は科学の入り口、文学、芸術との親和性も高い。なによりまだ謎が多く不思議で身近にいる生物というところが気に入っています。このおもしろさをほかの人にも伝えたい、子供たちも研究者志望なので粘菌の世界を盛り上げていきたいという思いから、マメホコリ工房を立ち上げ、マンガや本、アクセサリーなどの粘菌グッズを制作して発信しています。

今回、多くの皆さんの目に止まり、「キレイ」や「興味を持ちました」など色々なコメントをいただきました。自然界に青い生物の数は少ないので余計に皆さんの目に止まったのだと思います。こうやって興味を持っていただけることはとてもうれしく思います。

粘菌は身近にいます。興味を持たれた方は10倍ほどのルーペを持ち歩いて、キャンプや山登り、公園遊びの際、ちょっと探してみる生活はどうですか?生活がちょっと楽しくなりますよ。

◇ ◇
片岡祥三さん関連情報

Twitter / Instagram:https://twitter.com/kataoka5233
マメホコリ工房オンラインストア:https://mamehokori.stores.jp/

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片岡さんは、普段はマメホコリ工房として博物系イベント出店もされている。昨年からイベントの中止が相次いでいるが、一部アイテムはオンラインストアで販売中とのこと。知れば知るほど奥が深い粘菌の世界。ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。

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