天王寺動物園のオオカミの檻の前の注意書きが話題になっている。
遠吠えしている方々へ オオカミの前で鳴き真似をする方が多いですが、仲間の声ではないとバレています。群れメンバーの声は覚えていますし、格下には返事しないこともあります」
読んで残念な気持ちになったと同時に、遠吠えの鳴き真似をする人がそんなに多いのかという気付きも。いつ行けば遠吠えが聞こえるのか?そもそも何のためなのか?天王寺動物園のオオカミ担当の飼育員に詳しく聞いた。
ーーオオカミの遠吠えは何のため?
飼育員:野生では他の群れへの自己アピール、縄張りの主張としてだったり、群れの仲間への自己アピール、自分の仲間に居場所を知らせるため等の理由で鳴きます。動物園でも、お互いのコミュニケーションの一環として鳴くと思われます。
年間を通して朝の開園の音楽が流れると鳴き始めることが多く、順位の高い個体が鳴き始めると他の個体も鳴きます。2~3月頃は発情期なのでコミュニケーションが活発で、遠吠えの頻度も高くなり、終日遠吠えの観察がしやすい状態です。
ーー人間の遠吠えに対しオオカミから返事をもらうことはできるのでしょうか。
飼育員:野生のオオカミの研究者だと、自分が遠吠えをして、返事のした方向から群れの位置を特定するということもあるそうなので、ヒトの鳴き真似で返事をもらうことは不可能ではないと思います。しかし動物園で生活しているオオカミは毎日高頻度でヒトの鳴き真似を聞いているので、どんなに似ていても全てに返事する気にはならないのだと思います。
オオカミ同士は鳴き声で群れの誰が鳴いているかも分かるので、上位の個体の遠吠えなど重要な情報か、もしくは下位の個体の遠吠えや雑音など、そうではない情報かを判断して反応しています。動物園での鳴き真似練習は、オオカミにとってストレスになることもあるので、お止めいただきたいです。
ーー遠吠えするヒトを、オオカミはどう思って見てるんでしょうか。
飼育員:何とも思っていないと思いますが、オオカミのガラス前で多くのヒトが似たような鳴き真似をするので、そういう鳴き声の生きものだと思われているかもしれませんね。あまりに大きな音量を出すと迷惑そうにしています。
ーー飼育員さんは日常的に遠吠えを聞いてるんですね。
飼育員:体調が悪いと鳴かないこともあるので、遠吠えを聞くと「元気そうでよかったなあ」とか、返事が返ってこなくて独り言で終わってしまった時は「残念だったね」など思います。
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今年、天王寺動物園は開園110周年を迎える。遠吠えはご遠慮いただきたいが、スタンプラリーやワークショップなど楽しいイベントが盛りだくさんなので、ぜひ多くの人に足を運んでいただきたい。
天王寺動物園HP
https://www.tennojizoo.jp/