火星に生命体は存在するのだろうか。ジャーナリストの深月ユリア氏が日本の識者に取材し、米国の大学などの研究者が論文や著書に残した言説を引用した。
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かつて生命が存在していたのではないか、といわれてきた「火星」。ニュース配信サイト「TOCANA(トカナ)」元編集長でライターの角由紀子氏によると、「NASAの探索機が撮影した火星写真には雲が映っていることから、これまで考えられていたよりも、大気の濃度も高く、水も存在するのではないかと言われている。また、ピラミッドがある都市・カイロは、かつてのアラビア語で『火星』という意味で、実際に火星にもギザの三大ピラミッドと配置が完全に一致する『火星の三大ピラミッド』があることが分かっている上に、火星の自転周期は、人間の体内時計とほぼ一致する24時間40分であることから、そもそも地球は火星文明や生命が由来で発展した星だという説もある。さらに、近年アメリカの物理学者が火星の古代文明は核爆発によって滅んだことを裏付ける数々の証拠と論文も発表している」
日本唯一のスピリチュアル月刊誌「アネモネ」の編集長の中田真理亜氏によると、「今文明の前に存在したアトランティス文明には、火星から地球に移住した種族が共存していた」というロマンに満ちた都市伝説まであるそうだ。
作家の山口敏太郎氏によると、「現在、火星ではNASAが主体になって新たなミッションが行われている。その一つが『火星の生命の痕跡や証拠の発見』だ。最新の探査機であるパーシヴィアランスのローバーは数十億年前に隕石の衝突によって形成され、かつては大きな湖だったとされているジェゼロ・クレーター内で調査を行っている」という。
そして、10月25日、米学術誌のアストロバイオロジー誌に、火星に生命が存在する可能性を示唆する論文が掲載された。論文によると、 「火星にかつて水が存在していた頃、生物が生息していたとしたら、何千年にもわたる火星の環境変化に耐えながら、地中で休眠状態の可能性がある」という。
現在の火星は、大気が薄く、生命に有害な宇宙放射線が強く、気温は地球上の南極の冬に匹敵するという過酷な環境だ。
ノースウェスタン大学の化学者で、この研究の共著者であるブライアン・ホフマン氏によると、「火星の大気には、流水も大量の水分もないので、細胞や胞子は完全に乾いてしまう」「火星の表面温度はドライアイスと大体同じであることも知られている。つまり、地表の下深くは凍っている」という。
しかし、そんな環境でも生存可能な微生物があることが判明した。研究チームは地球の6種類の細菌と菌類を、火星を模した土地に置き、火星の地表レベルの宇宙放射線を模倣して、ガンマ線や活発な粒子などを照射した。結果、地球に生息する一部の微生物は、火星の過酷な気候で何億年も生き延びられる可能性があることが結論づけられた。論文によると、「コナン・ザ・バクテリア」という微生物は「乾ききった酷寒の環境で天文学的な量の放射線を浴びせても生き永らえた」。さらに地中にこもれば、生存率は飛躍的に高まり、火星の地表から10センチ下で150万年、地表から10メートル下で2億8000万年生き延びられる可能性があるそうだ。
さらに、ユニフォームドサービス大学保健科学部の病理学者で、論文の筆頭著者であるマイケル・デーリー氏によると、「火星の環境は隕石の衝突によって、幾度も変化している」が、これが微生物の生存率を高めるのに好都合だそうだ。火星の地下には凍った水が存在していて、火山活動や隕石衝突による局所的な温度上昇で溶ける可能性がある。そうなれば、休眠状態にあった生物は活動を再開し、再び水が凍って休眠するまでの間に増殖することで、生存率を上げる可能性があるという。
ノースウェスタン大学の化学者で、この論文の共著者であるブライアン・ホフマン氏によると、「このような微生物が火星で進化した場合は、現在まで生き延びてきた可能性もある」という。研究チームは今後「火星探査によって地球外生命体の証拠を発見する現実的な可能性はどれくらいあるのか」と更なる調査を進めるそうだ。
ただし、ホフマン氏が懸念するのは「火星の微生物のサンプルを地球に持ち帰ると、地球が感染する可能性もある」ことだ。つまり、地球外生命体を追い求めるプロジェクトの中で、火星の過酷な環境を生き延びた「最強のエイリアン」の眠りを呼び覚まし、地球に持ち帰り、微生物が地球上で増殖したとしたら…。そのエイリアンは地球上の生物にどのような影響をもたらすのだろうか。