なし崩し?で継続する欧州のサマータイム 「最後の1年」のはずだった今年も現状維持 米国では23年廃止へ

島田 徹 島田 徹
写真はイメージです(izzzy71/stock.adobe.com)
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 欧州27カ国では3月末から夏時間(サマータイム)に入り、日本との時差が7時間と短くなった。導入後の数日はこれまでの冬時間から1時間早くなることで、社会全体が文字通りの時差ボケ状態になるのが常だが、同制度の廃止やその後の対応については専門家の間でも見解の相違があり誰もが納得できる結論が見出せない状態になっている。

  サマータイムに終止符、の流れができたのは2018年8月。欧州連合(EU)の政策執行機関、欧州委員会が年に2回時間を変動させるのを止め、年間通して冬時間か夏時間に肯定することを提案した。これは460万人からのアンケートで80%が時間変更を止めるのに同意したためで、欧州議会は2019年、2年後(2021年)が最後の時間変更にすべきとの方針を示した。

  しかし、その後各国や欧州連合が何らかの最終決定を出すには至っておらず、「最後」となるはずだった1年後の今年も現状維持となっている。

  議論は2点。同制度を撤廃するか、撤廃するとすれば冬、夏いずれの時間に合わせるかー。

  欧州委員会の要請を受けて実態調査などを行っているスペイン時間有利化のための全国委員会(ARHOE)のホセ・ルイス・カセーロ会長は「時間の変更がなければ我々の体内時計を調整する必要がなくなり睡眠障害や心臓血管などへの問題が経験が軽減されることが見込まれる」と主張。時間変更した週には交通事故が17%増加、反対に乳牛の搾乳量は最大で20%減るという。

  これに反対するのは自然学者たちで、その主張としてはサマータイム廃止を唱えたのは北欧諸国で、半年はほぼ1日を通して太陽が出ており、残りの半分は夜が長い状況で1時間の前後には影響が無いという。同じ条件下にないのが地中海沿岸地域では季節ごとの時間調整は有効だと見ている。

  サマータイムを撤廃するとして、年間通して冬時間、夏時間のどちらを採用するかについても意見は分かれている。2018年の調査ではスペイン人の93%が夏時間を希望している。これは午後の日照時間が長くなり余暇時間の増加や観光面でも収益の増加が見込まれるという。

  対して冬時間の採用を主張するのは冬季の人間の活動への影響。朝の1日が始まる時間帯で朝日があるのと無いのとで労働や学習の効率に違いが出るという。前出のカセーロ会長は「早い時間帯での就寝につながり、その習慣は心臓血管にとって良いこと」としている。

  世界的に見ると、アジア、アフリカではほとんど導入されておらず、米国では2023年から撤廃されることになっているサマータイム制度。その中で3月も半ば過ぎに入りスペインの政府関係期間が2026年まで体制維持になると伝えた。意見の一致が見られず議論が高まることもなく、新型コロナウイルス関連やロシアのウクライナ侵攻のニュースの陰に隠れる形で小さくこの話題が扱われているところになし崩しで結論が先送りになった感が色濃く出ている。

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