アニメーター必須アイテムを巡って、業界が対応を迫られた。三菱鉛筆が今年2月、「原材料調達の問題」から硬質色鉛筆「7700」橙色・黄緑・水色の生産終了を発表したことが発端だ。同鉛筆の重要度について、日本アニメーター・演出協会の大坪英之さんに話を聞いた。
アニメ工程を簡略すると原案→シナリオ→コンテ→レイアウト→原画→動画→仕上・撮影(彩色や背景、特殊効果)→編集→ラッシュ→アフレコへと進む。かつてセル画が用いられた彩色工程以降は既にデジタル化。一方、作画行程(コンテから動画)は、いまだ紙と鉛筆を用いたアナログが一般的だ。
大坪さんは「色鉛筆は瞳や髪のハイライト、女性の唇、衣服の模様、同じパーツの影部分の境界線など、アウトラインが黒色ではない線を引くのに使用します。特に水色は主に影の境界線、ほぼ全ての物体に陰影があるのでとても多く使われます。今回の3色以外では(瞳や髪のハイライトなどで)赤色が多く使われますが、こちらは生産を続けていただけます。そして彩色するためパソコンにスキャナーで取り込む際、有効なものが硬質色鉛筆です」と説明した。
硬質のため細く明瞭な線が引け、スキャン画像は鮮明で彩色しやすい。また、軟質より消しゴムで消しやすい。他メーカーの硬質鉛筆と比べて描きやすさ、消えやすさ、さらに入手しやすさに定評があった。同協会によると、代替品の候補にシャープペンシルの三菱鉛筆「ユニナノダイヤカラー芯」0.7ミリ、「パイロットネオックス・カラーイーノ」0.7ミリが候補に挙がるが、それぞれ筆圧を強くするなど技術的な調整が必要になる。