大河『べらぼう』座頭の高利貸による恐怖の取り立て…旗本・森忠右衛門が逃げ出した背景 識者語る

濱田 浩一郎 濱田 浩一郎
画像はイメージです(BBuilder/stock.adobe.com)
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 NHK大河ドラマ「べらぼう」第13回は「お江戸揺るがす座頭金」。座頭による高利貸は江戸の人々の嫌うものでしたが「貧につまされて座頭の子を孕み」(借りた座頭金を返すことができないので、肉体で相殺したところが、その座頭の子供ができてしまった)という川柳もあるように、生活困窮から借金をしなければいけない者もおりました。

 そして借金が返せないとなると、その取り立てはとても厳しいものだったとされます。玄関の真ん中に上がり、声高に口上を述べ催促する。わざと近所に聞こえるように大声で悪口を言われることもあったとされます。世間体を気にする人にとっては、これは堪えたでしょう。

 とはいえ、生活困窮の末に座頭から金を借りた訳なので、どのように悪口を言われても、責められても「仰せの通り」と頷くしかありません。何か口を挟めば更に騒ぎ立てられるから堪りません。大勢の盲人が昼夜を問わず「強催促」「居催促」してくるのですから、多くの人が生きた心地がしなかったでしょう。『染直大名縞』という黄表紙(草双紙の一種。黄色の表紙の絵本)には座頭が旗本を取り立てる様が描かれています。

 それによると、座頭は大勢で旗本の家に押しかけて「さあ、利足(利息)を付けて返せ、返せ」「ここな大泥棒奴、早く返せ、返せ」と叫んでいます。もちろん同書は絵本小説であり事実そのままではありませんが、当時の座頭による厳しい取り立ての実態を幾分かは反映したものと思われます。

 安永7年(1778)7月、旗本の森忠右衛門夫妻、その息子の虎太郎が出奔する事件が起こります。座頭の高利貸の借金に悩まされて脱走したのでした。高利貸に虐められたことが要因とも言われますので、前述したような強烈な取り立てが行われたのでしょう。「大泥棒」と罵られたか否かは分かりませんが、仮にそのように言われたとしたら、武士の名誉も面子も丸潰れです。大いにショックだったはずです。

 座頭は借りた者(この場合は武士)が返済できなければ、その上司の元にも押し寄せたとされますので、もしそのようなことをされたら、信用を失くしてしまいます。最悪の場合は解雇、暇を出されてしまいます。このような事をあれこれ悩んで森忠右衛門は出奔したのでしょう。

 ◇主要参考・引用文献一覧 ・三田村鳶魚『史実と芝居と 江戸の人物』(青蛙房、1956)・『田村栄太郎著作集 第3』(雄山閣、1960)・八剣浩太郎『銭の歴史』(大陸書房、1978)

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