映画「瀬戸内少年野球団」などを手がけた映画監督の篠田正浩さんが25日に肺炎のため死去していたことが27日、分かった。94歳。株式会社・表現社が発表した。葬儀は家族葬で執り行われ、後日、お別れの会を行う予定という。妻は女優の岩下志麻(84)で、おしどり夫婦として有名だった。
篠田さんは岐阜県出身。早大卒業後、1953年に松竹に入社した。60年に「恋の片道切符」で初監督。同年に松竹に入社した岩下を監督2作目「乾いた湖」のヒロインに起用し、66年に岩下と結婚した。66年にフリーとなり翌67年に独立プロ「表現社」を立ち上げた。映画「心中天網島」「瀬戸内少年野球団」などで知られ、2003年の「スパイ・ゾルゲ」を最後に映画監督業から引退した。
関係者によれば、篠田さんは骨折して都内の病院に入院していた。岩下は献身的に付き添っていたが、24日に会話の中で「(わたしは一旦)うちに帰る?」と尋ねたところ、篠田さんも「うん」と返事をしたという。岩下は一旦、帰宅したが、25日未明に篠田さんの容体が急変。岩下は篠田さんを看取ることができなかったという。
篠田さんは2003年に公開された「スパイ・ゾルゲ」を最後に監督引退を宣言した。同作の撮影現場では、岩下がドキュメンタリー作品「わが心の『スパイ・ゾルゲ』」を撮影。最後の作品に奔走する夫を、岩下が映像に収め、最後まで“夫唱婦随”を貫いていた。篠田さんは2021年に「夜叉ヶ池」4Kデジタルリマスター版の上映に際して、主演の坂東玉三郎と舞台あいさつを都内で行ったのが最後の公の場となった。