「上場廃止」という言葉をニュースなどで目にしている人はいるだろう。有名企業や新進気鋭の企業が上場廃止を発表する際は大きな話題になる。ただ上場廃止と聞いて、その意味や影響を正確に理解している人は少ないのではないだろうか。多くの人は漠然と「悪いこと」というイメージを抱いているかもしれないが、実際はどうだろう。
悪いイメージを抱いている人にとっては意外に感じるかもしれないが、実は上場廃止には多くのメリットがある。代表的なメリットは、外部からの圧力から解放されることだろう。上場企業は常に株主の意向を気にする必要があるため、「物言う株主」の影響力が強まっている近年では、経営陣にとっては頭の痛い問題となっている。そこで上場を廃止すれば、もう株主の意見に左右されることはなくなるのだ。
また短期的な株価の上昇や株主の評価を意識する必要がなくなるため、長期的な企業価値の向上に力を入れられるようになるのもメリットのひとつだろう。さらに上場を維持するため必要な、財務報告の作成や監査法人への支払い、株主総会の開催といった費用が不要となる。
しかし、当然上場廃止はメリットばかりではない。上場廃止をすることで株式市場を通じた資金調達はできなくなったり、企業の信用力やブランド価値が低下してしまったりする可能性があるだろう。それでも近年では、大正製薬ホールディングスやベネッセホールディングス、ローソンなどの有名企業が上場廃止を選択している。
このように、上場廃止は必ずしもネガティブなものではない。資金調達の制限やブランドイメージへの影響などデメリットは存在するものの、経営の自由度向上やコスト削減など、無視できないメリットも多いのだ。
重要なのは「上場廃止」という言葉だけにとらわれず、その中身を正確に理解することである。企業にとって上場廃止が最適な選択肢となる場合もあれば、そうでない場合もあるだろう。一概に「上場=良い会社」「上場廃止=悪いこと」と判断するのではなく、各企業の状況や戦略を個別に見極めなければならない。
我々消費者は「上場廃止」という言葉に惑わされることなく、冷静に企業の実態を見極める目を持つことが求められているのである。