鴨川デルタならぬ「山科デルタ」がSNSを通じて広まりつつある。
京阪出町柳駅近く、高野川と賀茂川が合流するポイントであり、学生が宴会をしたり観光客の休憩所など、様々な人が集まり時にカオスとも評される鴨川デルタ。唯一無二な存在感だが、山科にも同じ地形でミニサイズの「山科デルタ」が存在するそう。
地図で見ると、確かに川がY字に合流するポイントが。一体どんな場所なのか、京都大学大学院で地理を学び、書籍「Y字路はなぜ生まれるのか?」(晶文社)を出版した重永瞬さんに話を聞いた。
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――山科デルタの場所は?
重永:山科の勧修寺公園の近く、山科盆地の南辺りですね。山科川と旧安祥寺川が合流するポイントです。
――鴨川デルタと比べて山科デルタはどんな場所ですか?
重永:広さでいうと鴨川デルタの4分の1くらいの狭さです。裏手の公園には広い運動場もありますが、山科デルタの石畳がある部分は10人集まったらいっぱいくらいのサイズ感。公園は広々としていて、せせらぎの音と、魚が沢山いるので泳ぐ姿も見られて、ぼーっとできるいい場所です。ただ鴨川デルタと全然違うのが、すぐ南に名神高速が走っているところ。眺めは全然良くないですね。
――鴨川デルタのような地形、かつ快適に過ごせる場所は全国的に珍しいんでしょうか。
重永:川はたいてい鋭角に合流するので、そこに三角の土地が生まれることは珍しくありません。しかし、ほどよい広さの川が都心部を流れ、飛び石で川を渡れるようになっている鴨川デルタのような場所は全国的にも限られています。土地の条件はそろっていても、護岸工事をされているとか、人が水辺まで行けないようになっていることがほとんど。山科デルタは比較的水辺まで行けて、鴨川デルタと同じような飛び石もありますよ。
そもそも鴨川デルタは、平安京があった頃から下鴨神社の境内の一部として、元々人が集まる場所だったんです。そして実は、地理学の場合「デルタ」は川の河口にできる三角州を指す用語なので、鴨川デルタも山科デルタも地理学的には「デルタ」ではないんです。「鴨川デルタ」はどうもギリシャ文字「Δ(デルタ)」の形状から近くの学生が言い出して、1990年代以降に定着した俗称のようです。あの思い思いのことをして過ごす独特な雰囲気も、近くに学生が多いのが影響しているのでしょう。
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観光客や地元の学生が多く賑わう鴨川デルタに比べ、山科デルタは地元に根付いた公園。魚を取る子供や、比叡山を眺めることもできるそうだ。京都ならではの見晴らしのよい景色と、せせらぎの音に癒されに行ってみてはどうだろうか。
重永瞬 X
https://x.com/Naga_Kyoto
著書「Y字路はなぜ生まれるのか?」晶文社
https://www.shobunsha.co.jp/?p=8561