政治資金パーティーの裏金問題から「派閥解消」の動き、東京地検特捜部による立件が見送られた安倍派幹部議員の処遇など、「政治とカネ」の問題めぐって自民党が揺れている。その中で、現在も世論調査で「期待される次期首相」のトップに立ち続けている石破茂元幹事長は何を思うのか。まだ自身の立場を明言する段階ではないものの、石破氏に政治家としてあるべき姿を聞いた。
昨年12月に実施された共同通信社の世論調査で、今年9月予定の自民党総裁選に向けて「誰が次期総裁にふさわしいか」という問いに対して、石破氏が25・7%で前回の調査に続いてトップに立った。自民党支持層に限ると、前回3位だった石破氏が23・5%で首位に躍進するなど、「政治(自民党)不信」の高まりによって、同氏には〝追い風〟が吹いているというイメージを抱かせた。今年1月に実施された他の世論調査でも石破氏が「首相になってほしい政治家」の1位になっている。
ただ、こうした〝国民的人気〟が現実の政界に反映されるかというと、話は別だ。石破氏自身も、よろず~ニュースの取材に対して、「今、私は党の責任ある立場にいないので、いろいろな発言がかなり自由にできる。だから、『野党は頼りないが、自民党もいかがなものか?自民党に変わってほしい』と思う方々に私が支持をいただくのはある意味では自然な流れで、別に、私が立派だからでもなんでもないんです」と客観的に分析した。
2月4日で67歳になる。今秋予定の総裁選を巡る動きについて明言していないが、昨年12月、「ユートピア政治研究会」(1988年結成)の同志であり、2018年と20年の総裁選に立候補した石破氏の推薦人に名を列ねた渡海紀三朗氏が政調会長に就任したことで、石破氏につながる〝流れ〟を感じさせた。石破氏に渡海氏について聞くと、「立派な人ですよ。早稲田の理工(学部建築学科卒の一級建築士)らしいところがある」と理詰めで実直な人柄を指摘した。
石破氏は「総裁(首相)になる、ならないは別の話」としながら、為政者の在り方について「『この国において、何を今、急いで整備しなければならないか』という優先順位を考え、国民からの『そうだよね。それをやってほしかったんだよね』という実感に近い方策を追求すること」との見解を示した。
総裁(首相)云々の話は封印。まずは、一政治家として、日本政府はどうあるべきか、何が必要なのかと問うと、石破氏は具体的な一例として「防災省の創設」を挙げた。
「阪神・淡路大震災があり、東日本大震災があり、熊本地震があって、今回の能登半島地震が起こったわけですが、以前からと同じように避難所はあのような有様で、災害関連死もだんだん増えている。一番困難な状況にある人たちに、希望を持ってもらい、明日以降の生活を立て直していこうという気持ちになってもらう、そういう国家でありたいと思います。だが、現状はどうか。日本国内でシェルターが整備されないのと、『防災省』ができないのは、同じような理由によるものなのではと思います」
「防災省」が必要と考える根拠とは。
「能登半島地震でも、政府も自治体も、自衛隊も警察も消防も、一生懸命やっています。しかし今までの多くの経験がよりよい態勢に活かされているとは言い難いのが現状です。欧州で有数の地震国であるイタリアは何度も大きな地震に見舞われ、災害対策の国家機関(首相が率いる「イタリア市民保護局」)を創(つく)りました。震災が起こると、真っ先に被災地にコンテナ型のトイレが届き、その次にキッチンカーがやってきて、さらには簡易ベッドが届く。それらは国民の0・05%と備蓄量が決まっていて、地震が起きると被災地以外の備蓄倉庫から直ちに配送されるわけです。なぜ、これほどに災害の多発する日本で、同じように『防災省が必要だ』という議論が多数になり、実現しないのでしょうか。それは核シェルターが実現しないのと構造的には一緒なのではないでしょうか。しかし、防災省的な総合機関がないと、常に災害対処は補正予算と特別措置法で行わざるを得ないのです。結果的に計画的な備蓄や訓練は困難です」
石破氏は「誰が総裁になるとか、ならないとかという話ではなくて、今、この国の政府としてやらなければいけないことは、国民一人一人の生命、財産を守るためにどのようなの政府をつくるか、ということでしょう。有事についてもそうです。エネルギーや食料、水や衛生設備が足りなくなるのは目に見えています。災害や有事にきちんと備え、被災者のQOL(※クオリティ・オブ・ライフ=人生や生活の質)を実現することが、今は最も望まれているのではないでしょうか。自民党はそういう『国家のために必要なことをやる政党』だと思ってもらえるよう、これからも大いに努力しなければなりません」と思いを吐露した。