マルチ商法・悪徳商法にだまされないために知っておくべきこと だます側の手口、被害を防ぐ対策は?

深月 ユリア 深月 ユリア
画像はイメージです(NORIMA/stock.adobe.com)
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 何かと不穏な要素が漂う世相の中では、マルチ商法や悪徳商法が横行する。ジャーナリストの深月ユリア氏が専門の弁護士らを取材し、だます側の手口、だまされる側の傾向、被害に遭わないための対策を聞いた。

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 終わらないコロナ禍、世界経済の不況・物価高の世界経済の不安につけ込み、マルチ商法の勧誘が増えている。

 筆者も特に「ウィズコロナ」に方針が変わり、さまざまなイベントの自粛が解禁されてから、健康食品やら仮想通貨やらの勧誘を受けるようになった。

 いずれも「1時間だけ時間くださいませんか、素晴らしいメンターを紹介します。間違いなく人生が変わります!」「代表は世界平和のために頑張っていて、私はこのビジネスを紹介することで人助けをしています。ぜひ、代表に会ってください」というふうに、会員が何らかのカリスマをあがめているという共通点があり、勧誘方法が類似していた。

 このような勧誘をする人、マルチ商法をはじめとする悪徳商法にだまされやすいのは、素直で真面目な人が多く、勧誘してくる会員は悪人ではないからこそ、「話だけでも聞いてあげてもいいかな」という気持ちになってしまうのかもしれない。では、だまされないためにはどうすればよいのか。筆者がマルチ商法・悪徳商法に詳しい滝本太郎弁護士に取材したところ(滝本氏のブログも参考)、悪徳業者は人の誰にでもあるような「心の隙間」をついてくるという。例えば、以下のような心理学の法則が利用されるという。

 ・好意性の原理 まずは友人・信頼関係を確立してから勧誘を始める。

 ・段階の原理 「1時間だけの学習会だよ。途中でやめるのは自由だよ」などと勧誘する。

 ・賞賛手法 「素質があります、あなたこそがこの世界を救うかも」と賞賛する。

 ・権威の原理 「~先生も認めている」など権威ある人物名を挙げる。

 ・希少性の原理 「このチャンスはまずない」などと希少性を主張。

 ・返報性の原理 お茶代・参加費を立て替えて、「世話になった」と思わせる。

 ・優越感・達成感の原理 会員でない人との違いを主張したり、会員の間で階級を設けて、会合などへの参加回数を競わせる。

 ・同調性の原理 集団に入ると、その集団のやっていることが正しいと「社会的証明」が得られてしまい、合わせてしまう心理が働く。

 ・勧誘者の原理 まだ組織について確信が持てないうちに人を勧誘させて、自ら勧誘することで「確信」させる。

 ・陰謀論・単純化・思考の省略 「それはコレコレの陰謀なんだよ」等と陰謀論を持ち出し思考を単純化させる。

 ・秘密の共有手法 代表とメンバー、上位メンバー間でだけ秘密を共有して思想を固定化させる。

 ・情報遮断 「こんなすごいことを誰かに言ってはいけない」などと不都合な情報に触れさせないようにする。

 また、脳学者の中野信子氏の著書「フェイク ウソ、ニセに惑わされる人たちへ」によると、「確証バイアス(与えられる情報の中で、自分に都合の良いものだけを選択し、都合の悪い情報は無意識に排除する)」「真実バイアス(特に疑いを抱く必要のないと思われる相手の言うことは真実だと思い込む)」「正常性バイアス(自分だけは大丈夫、と思い込む)」の3つのバイアスの心理と、集団に入ってからの「同調圧力」をマルチ商法・悪徳商法の組織は利用するという。さらに、真面目で善良な人ほど同情心を抱きやすいが、「詐欺師は同情心をかき立てる話が上手」である。「同情心は時に本能である警戒心よりも優先される」という。

 いかがだろうか。誰もが「心の隙間」を持つ故に、そもそも「人はだまされやすい生き物」だという自覚を持つこと、特に新しい情報は虚偽である可能性も常に考える姿勢が必要なのだろう。

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