円周率100万桁を並べた同人誌「円周率1000000桁表」が、1996年のコミックマーケット(コミケ)夏での販売から25年経過した今も増刷を求められる人気を誇っている。同書を発行した同人サークル・暗黒通信団のシ氏は「ホワイトデーのプレゼントに贈るという男性も毎年います」と明かした。
1ページに円周率の数表1万桁ずつを記載。ページを何度めくってもひたすら数字が並ぶというある意味、異様な光景が続く。一見、どこに需要があるのか想像がつかないがその”マニアックさ”に興味をひかれる人は決して少なくない。理系の層を中心に小学生から高年齢まで幅広い購入者がいるという。シ氏は「今年もとある高校の数学教師が卒業生に配布するといって、100冊単位で特注していただきました。書店で小学生が親にほしい!とせがんでる場面も見たことがあります」と説明した。
当初、同サークルの書籍に関して再版の予定はなく「『コミケで買い逃したら終わり』というのがカッコいいなと」と”希少性"に価値を見いだしていた。しかし、その人気の高さから、販売して何年が経過しても書店や販売サイトから増刷の要望が届き続けた。「しまいにはAmazonのマーケットプレイスで数万円というプレミアム価格がついて、諦めて増刷に踏み切りました」という。2022年に第15刷を発行したが、書籍内の奥付では、円周率ネタの遊び心を挟み「第3.141592653589刷発行」と13桁で記載されている。同様に価格も「314円」と設定された。
暗黒通信団は、1993年ころから活動を開始。メンバーの定義が曖昧で正確な人数は誰も把握していないという。同書のようにとがったネタの同人誌を作成しコミケに出す活動を主に行っている。「円周率100万桁表」の校正に関して苦労したかと問うと「いや、もうそれはそれは」と、外からはうかがい知れない実情があることをうかがわせた。
同書の著者である牧野貴樹氏は元東京大学准教授。「本業の本より円周率のほうで有名になってしまったようです。どこかの学会で『あっ円周率の人ですね』といわれて困惑していた話を聞いたことがあります」と反響の大きさを明かした。