東京都八王子市にある歯科医院「きぬた歯科」の看板場所が記載された同人誌「きぬた歯科看板完全攻略マップ」が、昨年大みそかに東京国際展示場で開催されたコミックマーケット(コミケ)に出品された。その物珍しさが注目を集め、初のコミケ参加にも関わらず、用意した174部数は瞬く間に完売。出展サークル「大日本きぬた連盟代表」のD.J.マメ氏(@minor1979)は「軽い気持ちで参加したら想像以上の反響があり驚きました」と振り返った。
コミケ当日、きぬた院長の顔が大きくプリントされているポスターが、ブースに設置された。強烈なインパクトに思わず足を止める参加者も。同看板は東京、神奈川、栃木、山梨、埼玉の5都道府県で、現在250カ所以上設置されており、そのデザインは全て異なるという。冊子には、各看板の所在地と5段階評価のレア度、特徴や最寄り駐車場まで細かく記されている。添付されているQRコードを読み取ると、グーグルマップにとび、現在地からその看板場所まで道案内されるように設定した。 同シリーズは全4冊、計200ページ以上に及ぶ。初参加にも関わらず、5時間で全174部が完売した要因について同氏は「親近感」を挙げた。「(きぬた歯科がある)八王子・横浜あたりに住んでいる方にとって、なじみがあるんだと思います。コミケでは実際に『自宅の近くに看板があるんで』っていう話を聞きました」と見解を示した。また、ブースを見て好奇心で購入した人も少なからずいるとうなずいた。
同氏が同人誌の制作に取りかかったは約半年前。同看板における「数の多さ」と「デザインの多様性」に興味を引かれた。「自己満足にひたるだけだともったいないなと思って本にしてみようと思いました」と話した。院長に提案すると、二つ返事で承諾を得た。
制作は全て独自の調査で行われた。グーグルストリートビューでしらみつぶしに看板の場所を調べ、車・電車を用いて現地に向かい撮影を行った。朝6時から夕方ごろまで各地を巡り、多い日は1日で30カ所を撮影した。ここまで夢中になれる理由は自身の妥協を許さない性格にあった。「調べたことをあますことなく形にしたいんです。普段の生活においても中途半端にやるのがあまり好きじゃなく、やるんだったらやりきるっていう思いはありますね」と明かした。
2年ぶりに開催されたコミケでは、購入者が同書を紹介したツイートが9万を越えるいいねを獲得するほど、大きな反響を呼んだ。「みんなひそかに『東京に来ると必ず見るな』という風に疑問に思っていたんだなと実感しました。こういったものを形にできる場がコミケなんだなと思いました。今年夏のコミケにもまた参加したいです」と意欲を見せた。