愛らしいルックスと知性を兼ね備え、プロの作家も舌を巻くほどの読書家としてもしられる、フリーアナウンサーの宇垣美里(30)。このほど、よろず~ニュースの単独インタビューに応じ、〝人生を変えた一冊〟を明かすなど、自らの読書論を語り尽くした。
神戸に生まれ、京都の大学に通い、TBSアナウンサーとして東京に出てきた宇垣アナ。強烈な〝上京思考〟が植え付けられたのは、高校時代に出会った一冊の本がきっかけだった。
「桜庭一樹さんの『少女七竈と七人の可愛そうな大人』っていう本を読んで、東京に行こうと決めて、大学では行けなかったですけど、就職では東京に行くことができました。旭川が舞台で、そこで主人公の女の子が『ああ、ここでは無理だな…』といろいろ感じて東京に出て行くという話なんですが、登場人物の1人が『美しかったり賢かったり馬鹿だったり、とにかく性質が異質な者は、みんな東京で紛れていればいい』って言うんです。自分で『変だな』と思っている人も、東京なら埋もれるのか…と思って、行きたいなと思いました」
結婚前に編集者として働いていた母の影響もあり、幼少時から本に囲まれて生活してきた。そんな中で、周囲との〝異質感〟も若干、覚えていたという。「中学生ぐらいから、山田詠美さんの本を読んですごく救われたんです。何となく、自分が異質だなって思った時に、救われた気持ちになりました。高校生になった時はだいぶ解消されましたけど、小学生、中学生の時は、異質な感じを持ってました」
その異質感の正体については「何となく…『別に、ここでずっと生きていくつもりはないな』と思ってたりとか。あとは、それでも昔のことですから、本が好きで、休み時間に本を読んでいるというだけ先生に心配されたりとか、勉強が得意ということが、ある種『ガリ勉』という感じになったりとか」と説明。一方で「そういう風に言われたら『遊んどけばいいのか』って外で遊んだりして、適度に調節したりはしてたんですけど、なんで調節することに労力を使わなきゃいけないのかな…とかは思ってました」と、すでに冷静極まりない視点も備えていたことをうかがわせた。
読書の幅は、小説から漫画まで幅広い。「基本的にフィクション、物語が好きで、本も好きだし、漫画もアニメも好きだし、映画も好きだし、舞台も好き。出力方法の違いがあるだけだと思っているので、違いがあるとも貴賤があるとも思っていないです」と熱っぽく語った。
そうした多くの創作物が人に与える影響を「私としてはすごく大きい思います。何度も救われてきた」という宇垣アナ。「いろんな創作物の中に、自分が分からなかった、言葉にできなかった感情を言語化してくれるキャラクターがいて、それでだいぶ納得したりとか、元気が出たりとか、よくありますね」という。
とりわけ、書籍に対しては特別な思いを持つ。『漫画は電子版で読んだりしますけど、小説は紙じゃないと読めない。『どこまで読んだっけ?』とかわかんなくなっちゃうし、紙の方が目が疲れないので、小説は紙で読みます。私は『もの』としての本が好きなんです。紙の匂いとか、装丁の感じとか」と、深い愛情が口をついて出た。
読書の目的は、人によってさまざま。宇垣アナは「それがプラスになるとかではなくて、読んでいる時間、本の中の違う世界に心を飛ばすのがすごく好きなんです。その瞬間の旅行じゃないけど、そんな感じがして」と明かした。「『あー、もう疲れた!』っていうときに、意識を飛ばすというか、自分じゃない何かになる時間っていう感じがして。本の中の世界は、現実の自分にはないじゃないですか。知らない世界にトリップできるのが好きですね。海外旅行に行っている時もそうなんですが、そこに自分がいようがいまいが、そこの世界は何も変わらない。〝無責任〟になれる感じがすごい好きなんです。一人ぼっちになれるっていうのは、すごく楽しいなと思います」。常に人前で、不特定多数の目線にさらされ続ける存在ならではの思いだろうか。
読書を通じ、日常的に多面的な考え方が身についている宇垣アナ。一方で、いわゆる芸能活動という仕事柄、自身については一面的な捉え方をされがちでもあるが、「その人たちが思う自分がそうなんだったら、へえ~…っていうぐらいですね」とサラリ。「何て言うんだろう…。自分って相対的なものだから、相手の思う自分っていうのは、いくつもあって当たり前だし、それをコントロールしようとも思わないので。『こんな感じに見えるんやな~』って。それを楽しんでる部分もありますしね」と、いたずらっぽく笑った。