「極左人狼~公安VS―」に見る同人ゲームの魅力「尖ってる!でもきらいじゃない」

あんどう美紗子 あんどう美紗子

「あっこの顔は…?と思ったらあなたの近くに」

4月10日、11日に開催されたアナログゲームイベント「ゲームマーケット2021春」への出展をきっかけにボードゲーム「極左人狼~公安VS革○派~」(以下、「極左人狼」)が注目を集めている。このゲームを制作したのは、ゲームクリエイターとして活動する達磨ゲームズだるまろう(@DharmaLow)さん。

レジスタンスの一員となり政府のスパイや金に目のくらんだ拝金主義者たちを総括する…ニッチな共産趣味を余すところなく表現したこの正体隠匿ゲームに、SNSユーザー達からは

「コレはズルい、最高」

「思想はさておき、なんか楽しそう」

「尖ってる…! でもきらいじゃない」

など遠巻きながらも好意的なコメントが多数寄せられている。

「極左人狼」についてだるまろうさんにお話を聞いてみた。

筆者:「極左人狼」を作ろうと思ったきっかけをお聞かせください。

だるまろう:元々ソ連や北朝鮮などをテーマにした、いわゆる共産趣味のゲームを作ってきたので、その続編として日本の共産主義を題材にしたゲームを作ろうと考えたのが始まりです。

なぜ共産趣味なのかという話は長くなりますが、昔から私が政治、宗教、UMA、宇宙人や催眠術などといった、いわゆる「怪しい」題材に惹かれるためです。

筆者:好きと公言しにくい題材ではありますが、密かに惹かれているという方は多いですよね。今回出展されたゲームマーケットでの反応はいかがでしたか?

だるまろう:TwitterなどSNS上では、主にビジュアル面で「やばい」「尖っている」といった反応が見られました。 イベント当日の反応は、これに加えて遠巻きにニヤリと笑う様な反応が多かった様に思います。

余談になりますが、私はこの会場で遠巻きにニヤリと笑うお客さんに、ニヤリと笑い返す瞬間が一番好きです。

ネガティブな反応はあまり見られませんでしたが、「大丈夫なのか」と心配する声も見受けられました。

筆者:「ニヤリ」に「ニヤリ」と返されているところを想像して、私もついニヤリとしてしまいました。わかる人にはわかる、というマニアックなところも「極左人狼」の楽しみ方のひとつですね。

作品に描かれた人物は、AIモンタージュ・ARTBREEDERで作成した架空の人物画像ということがSNS上でも話題になっています。これはどのような技術なのでしょうか?

だるまろう:いちユーザーに過ぎない私が解説するのもおこがましいですが、AIによる画像生成を行ってくれる海外のサイトです。 生成された画像には著作権も肖像権もありませんので、フリー素材として使用することが可能になります。

今回の様な顔画像の他にも、油絵風の肖像画、アニメキャラ、CDジャケット、風景など様々な画像が作成可能です。これからの時代、こういったジェネレーターが色々と出てくる事で技術的なハードルが下がり、より多くの人が思いついたアイディアを手軽に形に出来る様になれば良いですね。

筆者:何度見ても実在する人物の写真にしか見えませんね…。こういったツールによって、ユーザーからクリエイターになろうと思ってくださる方が増えると嬉しいですね。

だるまろうさんは「極左人狼」の他にも、「独裁者はつらいよ」「将軍様、核やめるってよ」など"共産趣味"な作品をリリースされていますが、制作するにあたって大切にされていることはありますか?

だるまろう:出来る限りの資料を当たって、テーマの歴史やバックボーン、思想を下調べする様にしています。 基本的に趣味で調べている事をテーマに選ぶので勝手にそうなる面もありますが。

それをゲームシステムに落とし込む部分については、残念ながらまだまだ力不足と思っていますので、フレーバーにしっかりと合致したうえでちゃんと面白いゲームを作っていきたいと思います。

筆者:試行錯誤されながらも、楽しんで制作されている様子がよく伝わってきます。だるまろうさんにとって、ゲーム制作の魅力とはなんですか?

だるまろう:一番の魅力は、自分が本当に「あったらいいな」と思う題材やシステムのゲームが作れる所です。特に今回のようなニッチでセンシティブな題材を含むゲームは、商業作品では絶対に作られることは無いでしょう。

アナログゲーム業界は急成長を続けていますが、今後ますます、商業マンガと同人誌の関係の様に同人ゲームにしか出来ない事が沢山出てくると考えます。

筆者:おっしゃるようにだるまろうさんのゲームは表現の自由を謳歌されていて、同人ゲームの鑑だなと感じました。最後に、今回の反響へのご感想をお聞かせください。

だるまろう:少なくともひと笑いして頂けたようで何よりです。今後もニッチな需要を満たすボードゲームを制作していこうと思いますので、なにとぞよろしくお願いいたします。

 

達磨ゲームズTwitterアカウント:https://twitter.com/dharmalow
通販サイト:https://dhalmagames.booth.pm/
共産趣味ゲームの他にも様々なボードゲーム、TRPG用品を出品中

◇ ◇

自分が面白いと思うものを作ること、表現することにルールはない。だるまろうさんの作品は、そんなクリエイティブを楽しむ初期衝動を思い出させてくれる。今後も我々をあっと驚かせ楽しませてくれる作品作りを期待したい。

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