米大統領選がウクライナに及ぼす影響 同国出身の識者が懸念「トランプ勝利なら支援中止、米国第一に」

深月 ユリア 深月 ユリア
カマラ・ハリス氏
カマラ・ハリス氏

 米大統領選(現地11月5日)の結果によって、国際情勢に変化を及ぼすであろう懸案事項の一つに、ロシアによるウクライナ侵攻がある。共和党候補のトランプ前大統領か、民主党候補のハリス副大統領かによって、その状況はどのように変わっていくのか。ジャーナリストの深月ユリア氏がウクライナ出身の識者に話を聞いた。

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 米大統領選ではドナルド・トランプ氏、カマラ・ハリス氏による激しい選挙戦が行われ、現地の世論調査による支持率はほぼ互角だという。「ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟」などの著者で、ウクライナ人の国際政治学者のアンドリー・グレンコ氏に米大統領選後の未来についてインタビューした。

 同氏は米大統領選の結果について「現在どちらが勝者となるかの可能性は五分五分でしょうね。事前投票より当日投票に行く米国人の方が圧倒的に多いので、たまたま、当日どちらの支持者が投票所に来るかです。天候にも影響されるし、両氏の持つ運次第ともいえるでしょう」と分析する。

 まず、ハリス氏が勝利して民主党政権が続く場合はどうなるか。グレンコ氏は「バイデン路線が継続され、ウクライナ支援が継続されますが、おそらくウクライナが負けずに踏ん張れる程度の今まで通りのペースです。当分の間は支援拡大がなく、支援拡大があっても少しずつでしょう」と指摘した。

 一方、トランプ氏が勝利した場合、同氏はウクライナの未来を悲観する。「トランプ氏は親露でウクライナ支援を止めるとはっきり主張しています。トランプ氏が勝利したら、来年1月20日に就任してから数か月はバイデン大統領が決めた予算内の支援が継続されるでしょうが、半年くらい経ってから、縮小されるか支援が取り止めになるかでしょう。それまでにウクライナが勝てば良いのですが、現状のままでは難しいです。ウクライナを勝たせるためには、ヨーロッパからの最大限の武器支援が必要です。万が一、ウクライナが負けたら、プーチンはヨーロッパの他の国々に侵攻するでしょう」と推測した。

 グレンコ氏いわく、トランプ氏はロシアにある弱みを握られているという。

 「MI6(英情報機関)元職員の報告書による情報ですが、ロシアの情報機関が2013年11月、トランプ氏が大統領になる前の不動産王だった時に自身が運営するミス・ユニバース大会のためにモスクワを訪問し、ホテルに宿泊した際に、女性との行為を撮影した映像を(ロシア側が)所有しているというものです。元々、トランプ氏は独裁者タイプで同じ独裁者のプーチンに憧れているところがあるようですが、報告書が事実で、ロシアが恐喝材料を持っているとしたら、トランプ氏は余計にプーチンの言いなりになるでしょう」

 この報告書については既に報じられており、トランプ氏は事実関係を否定している。いずれにしてもトランプ氏が大統領に就任した場合、米国は孤立主義に陥ると、グレンコ氏は予測する。

 同氏は「トランプ氏が大統領になると、これからの4年間、アメリカは国際舞台から消え、孤立主義に陥ります。トランプ氏は国際問題に関心がないので、ロシア、中国、北朝鮮の拡張主義を抑止しなくなるでしょう。しかも、トランプ氏は周囲の意見に耳を傾けず、独断ですべてを決めます。日本はアメリカに依存しない安全保障政策を考えなければならなくなるでしょう」との見解を示した。

 グレンコ氏の解説をまとめると、ハリス氏が新大統領に就任した場合はバイデン路線が引き継がれて大きな変化はなく、トランプ氏が就任した場合は米国第一主義が優先され、ウクライナ戦争やガザの戦争の動向含め、国際情勢は大きく変わるということになる。世界が注目する米大統領選。結果はいかに。

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