「サラダパン」 具材を「たくあん」にした理由 滋賀県で長年愛されるご当地パン 実は〝2代目〟だった!?

中江 寿 中江 寿
看板商品のサラダパン(つるやパン提供)
看板商品のサラダパン(つるやパン提供)

 滋賀県のご当地パンとして60年以上親しまれている「サラダパン」。滋賀県の湖北エリア、長浜市木之本町に本店を構える1951年創業「つるやパン」の看板商品だ。

 顧客から「おにぎりの代わりになるような、腹持ちをするパンを作ってほしい」とリクエストがあり、初代・西村秀敏社長夫人の智恵子さんのアイデアで誕生。1960年に販売を開始した。当時珍しかったサラダ油を使ったマヨネーズと胃に優しいと言われるキャベツの千切りをコッペパンに挟んだもので、50店舗以上の個人商店に卸すほどのヒット商品に。しかし、キャベツの水分がパンに染みてふやけるなど、日持ちがしないということで、1年で販売を中止した。

 何個包装のパッケージが大量に残ってしまい、これはもったいないと、キャベツの代わりになるものを智恵子さんが思案。食感があって水分が出なく日持ちのする野菜ということで、たくあんを刻んでマヨネーズと混ぜたところ、合う!ということで〝2代目〟の「サラダパン」として、パッケージを変えず1962年に販売を始めた。

 当初は1日20~30個の販売。やめようと思ったこともあったが、「ここのたくあん入りのパンが好きやから、やめないで」という顧客もいたため、続けることにした。すると、2000年頃からSNSや全国ネットのテレビ番組など、メディアで紹介されたことで人気に火が付き、現在は1日3000個製造するまでになった。

 専務取締役の西村豊弘氏(44)は「一番は地元の人が、いろんな場所にお土産として持って行ってくださるんですよね」と話す。たくあん入りのパンは珍しく、名刺代わりとして会話が盛り上がるそうだ。現在は群馬県のメーカーにたくあんを特注。マヨネーズもメーカーに市販よりマイルドな味の製品を依頼している。

 商品の95%が滋賀県のスーパーで販売。〝県外に工場をつくって、京都、大阪に進出しませんか〟〝看板を貸してくれませんか〟などの誘いもあったが、地元にこだわり続けている。西村氏は「サラダパンのような、すごくとんがった商品が、滋賀県の湖北という、のどかな所で作っているのが面白いのであって」と理由を明かす。

 時代によって味はマイナーチェンジを行っている。以前、浅漬けのたくあんを使用していた時期もあったが、たくあんのインパクトが弱く、5~6年前から1年以上漬けた、味も食感もしっかりとした古漬けに戻した。好みがはっきりと分かれるようだが、原点に戻ったパンチ力で人気となっている。

 滋賀県内のイベントとコラボする企画も多い。地元出身ミュージシャンの西川貴教が2009年から主催する、滋賀県最大の音楽フェス「イナズマロックフェス」には、西川の「ずっと地域のイベントとしてやっていきたいので、販売してください」という熱意に打たれて、第1回から協力。毎年のようにパッケージを変えて販売している。第10回、今年の第15回では中身もアレンジした。滋賀県を代表するイベントに成長したこともあり、西村氏は「私も使命感を持ってやっています」とやりがいを感じている。

 他にも昨年はびわこボート、今年も琵琶湖1周サイクリングコースをPRする「ビワイチの日」(11月3日)など、さまざまな分野の地元イベントとコラボしたパッケージのサラダパンを作製している。

 本店のある地域は過疎化が進んでいる。「たくさんの人を雇って、過疎化の一助になればいいなあと思っています。ここで育ててもらったサラダパンなので、ここで作り続けたいというのはずっとあります」と熱い気持ちを口にする。

 知名度&人気は全国区となったサラダパン。ネット通販、県外の催事場で販売することもあるが、「滋賀県でサラダパンを食べてほしいという思いが強くあるので。出来たてを食べに滋賀県に来てもらいたいですね」とアピールした。多くのファンに愛される〝オンリーワン〟のパンは、これからも地元でしっかりと根付いていく。

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