ロシアのウクライナ侵攻において、ロシア軍の戦闘機が頻繁に消失しているという海外報道がある。米フロリダ半島、大西洋のプエルトリコ、バミューダ諸島を結んだ三角形の海域「バミューダ・トライアングル」(通称「魔の三角地帯」)に結びつけた超常現象説などが一部で浮上しているというが、実際のところはどうなのだろうか。ジャーナリストの深月ユリア氏がウクライナ出身の国際政治学者であるアンドリー・グレンコ氏に見解を聞いた。
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英誌デイリー・スターによると、ロシア軍が侵攻しているウクライナのバフムートで頻繁にロシア軍の戦闘機が失踪しているという。インターネット上では「オカルトファン」が、この地帯を「船が頻繁に失踪する」ことで有名な「バミューダ・トライアングル」にちなんで「バフムート・トライアングル」と呼んでいる。
かねて、「春に雪が溶けたら両軍の攻勢が強まる」という見解があったウクライナで、いま何が起きているのか。ウクライナの国際政治学者で「ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟」などの著者、アンドリー・グレンコ氏にインタビューした。
-ロシアの戦闘機が失踪していることの背景には何があるのでしょうか。
「激戦地なので戦闘機が墜落したり、失踪することは珍しいことではありません。調査団が、墜落した戦闘機の残骸を探す余裕がないだけで『失踪』している訳ではありません」
2月に現地を取材した戦場ジャーナリストによると、「1時間しかバフムートに滞在しなかったのに爆撃があった」とのことだった。激戦地で「戦闘機墜落」は当たり前のことで、バミューダ・トライアングルのような「オカルト」的な現象ではないようだ。
-今後の戦況はどうなるのか。
「先日(3月20日-22日)、中国の習近平国家主席がロシアを訪問し、プーチン大統領と会談しました。両国は連携強化するという共同声明を発表しましたが、おそらく、『中国がロシア支援を拡大する』という密約を交わしたのではないでしょうか。なぜなら、中国は自国の利益を最大限に考える国であり、習近平の本音としては『ロシアに勝って欲しい』『ロシアが負けたら困る』のです。中国の対米政策において、世界最大の核兵器保有国であるロシアは味方につけたいのです。また、ロシアが負けたら、『独裁国家が民主主義国家に負けた』ということになるので、習近平は台湾有事を起こせなくなるでしょう。個人的な見解ですが、中国はロシアを経済支援、もしかしたら武器支援もし、夏にウクライナに大規模な攻勢をしかけるでしょう。ウクライナはそれに備えて、現在、新たな動員兵を訓練させています。なるべく死者、負傷者を出さないようにすぐに動員せずに訓練してから、という考えだと思います」
-ウクライナのために日本ができることはあるか。
「引き続きの経済支援、そして、できれば武器輸出三原則(国際紛争の当事国に武器輸出を認めない等規定したもの)を改訂して、武器支援もすること。岸田政権は防衛三文書を改訂して防衛力を強化し、新しい武器を購入します。その際に、古い武器は廃棄されますが、ぜひとも廃棄せずにウクライナに送って欲しいです。新しいものを購入して日本にとって不要になる多連装ロケットシステム(MLRS)などウクライナには大変有用になります」
MLRSについて補足すると、日本政府が今年1月5日に発表した『防衛力整備計画の概要』によると、2029年までに用途廃止が決定している。ウクライナ戦争を終わらせるには、中国の出方、そして日本の果たす役割は大きいということだろう。