俳優・中村敦夫が語る主演ドラマ「翔べ! 必殺うらごろし」カルト宗教と違う「正義のために使うオカルト」とは?

北村 泰介 北村 泰介
小説「狙われた羊」を約30年ぶりに復刊した中村敦夫。放映中の主演ドラマ「翔べ! 必殺うらごろし」についても語った
小説「狙われた羊」を約30年ぶりに復刊した中村敦夫。放映中の主演ドラマ「翔べ! 必殺うらごろし」についても語った

 参議院議員、作家などマルチに活躍してきた俳優の中村敦夫(82)が昨年、カルト宗教と信者を描いた小説「狙われた羊」(講談社)を約30年ぶりに復刊して注目された。中村といえば、1972年の放送開始で社会現象を巻き起こしたテレビ時代劇「木枯し紋次郎」(フジテレビ系)が代名詞的な作品となるが、その当時からライバル的存在だった「必殺シリーズ」(朝日放送)にも主演している。18日までCS放送「時代劇専門チャンネル」で放送される「翔べ! 必殺うらごろし」だ。中村がよろず~ニュースの取材に対し、同作について思いを語った。(文中敬称略)

 必殺シリーズ第14弾となる「翔べ! 必殺うらごろし」(78年12月-79年5月放送、全23話)で、中村は「太陽を信仰し、霊視能力のある行者役」を演じ、役名は「先生」。拳で相手を殴り倒す男装の流れ者「若」役の和田アキ子、記憶喪失の行商女にして殺し屋の「おばさん」を演じる市原悦子という3人に加え、俗世にまみれて人間臭さのある情報屋「正十」役の火野正平、食べて寝てばかりいる流れ巫女「おねむ」役の鮎川いづみ(当時)は殺しには手を染めずに行動を共にする。この5人がレギュラー出演者となる。

 同作には70年代後半のオカルトブームを反映した超常現象が登場する。たとえば、寝たきり老人の肉体がその念によって時空を超えて移動したり、殺される運命の妊婦が子どもを生かせたい執念によって胎児をたまたま出会った別の女性(おねむ)に移し替える、あるいはエクトプラズム(形のある幽霊)などの現象が物語に盛り込まれ、解説のナレーションが入る。

 最大の特徴は殺しの報酬としての金銭が発生しないということ。必殺シリーズでは異例となる。放浪の旅先で接した善良な庶民が殺された後、超能力で被害者の声を聞いて犯人をあぶり出し、無償で本人に代わってその〝悪人〟を殺して恨みを晴らすという筋立てだ。

 中村は「太陽神に祈ることによって、悪い殺人者が誰だったかとあぶり出すのが私の役。これもオカルトの一つなんですが、正義のために使っているわけなんですよね。それに対して、(カルト宗教による)『あなたの先祖が何百年もさかのぼって、苦しい思いをしているのが見えるので、献金しないと、あなたも地獄に落ちる』というものは寄付を集める時の教えですけど、同じオカルトでも、『うらごろし』のように悪い者を見つけ出すために使うオカルトと、献金のために使うオカルトは使い道が違う」と、自身が執筆した小説「狙われた羊」に込めた問題と照らし合わせて指摘した。

 自身が演じる「先生」は驚異的なジャンプ力で飛び上がり、いつも手にしている太陽を描いた旗竿を悪人に突き刺して成敗する。そして「俺には闇の世界から訴えかける魂の声を聞いてやる務めがあるんだ」というセリフを発する。オカルトというだけでなく、叙情性のある音楽と共に不遇な庶民に向けた情や優しさにあふれた視線も感じさせられる。

 中村は「理不尽に殺された人の恨みをはらしてあげるために犯人を捜すというオカルトが『うらごろし』にはある。アウトローたちによる正義の戦いですから。『先祖が苦しい思いをしている…』などとは逆ですね。そこの違いは面白いと思いますね」と見どころを語った。

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