深夜のコンビニでズブ濡れの女性客に「お地蔵様」への道を聞かれた 霊感ないバイト芸人が見た不思議

北村 泰介 北村 泰介
画像はイメージです(Photobank/stock.adobe.com)
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 年末になると「怖い話」を聞きたくなることがある。行く年を振り返りながら、「そういえば、あれは何だったのか?」と、日常では忘れていた不思議な体験がよみがえることもある。今年も怪談にまつわる数々の書籍が出版されたが、その中でも、お笑いコンビ「ナナフシギ」が今秋、世に出した著書「列島怪談 あなたの地域の一番怖い話」(宝島社)が注目された。怪談をテーマとしたYouTubeチャンネルの登録者が10万人以上という〝怪談芸人〟から話を聞いた。

 ナナフシギ(太田プロ)は、数多くの心霊体験をしてきたという大赤見ノヴ(43)と、怪談やUMA(未確認生物)などにまつわる知識が豊富な吉田猛々(44)のコンビ。日本全国にある怪談話を選りすぐり、北海道から九州・沖縄まで7地域にまとめた初の単著「列島怪談」が話題になった。

 「天性の霊感保持者」という大赤見は、この名字自体が呪われているのだという。

 「元僧侶のオヤジに『大赤見の名前、調べんなよ』と言われて、『なんで調べたらあかんの?』と思っていたら、大人になるにつれて、いろんなことが僕に降りかかってきた。実際、『大赤見』という名字が珍しいから、何かネタの取っかかりになったらと思って調べたタイミングで死にかけてるんですよ。やっぱり調べたらあかんのやと思いました」

 その「死にかけた体験」について、大赤見に聞いた。

 「20代の頃、後輩の父親が勤める会社の引っ越しを手伝いに、でかいライトバンを借りて現場に行った。その車をビルに横付けして、後ろのトランクを開けようとした時に、自分の名前を呼ばれた気がして、『え、何?』とトランクから離れたタイミングで、ビルの上から氷の塊が落ちてきて、そのトランクに直撃してグシャグシャにへこんだんです。その時、名前を呼ばれた気がしなければ、たぶん、僕もトランクに挟まってるんですよ。あれは『大赤見の呪い』だったのかと。結果的に命を助けてくれたんですけど」

 一方の吉田は「全く心霊体験はない」という。「小さい時からオカルト全般が好きでした」というが、「努力して心霊体験ができるものではない。(大赤見のように)血筋で(心霊現象が)見えるとかいいますからね。うちは家族の誰も見ないですから。見たいと思うんですけど」。そんな吉田だが、過去に「1度だけ不思議な体験をした」と明かす。

 「売れない若手芸人の頃、コンビニで夜勤のバイトを週5回くらい、夜10時から朝6時まで、1人で働いていたんです。夜中の2時か3時頃、外は雨が降っていて、店内に人がいない時、ピンポーンとお客さんが1人で入って来た。傘もなく、ズブぬれで、映画の『貞子』みたいに髪の毛もダラッとなっていて…。そんな人がレジに来た。入店してすぐレジに来る人のパターンはタバコを買うか、公共料金の支払いなので、『会話しなくちゃいけない』と思っていたら、その女性に『すみません、この辺にお地蔵様ってありませんか』と聞かれたんです。深夜の2時、3時に『お地蔵様』ですよ!近くに六地蔵(6体が並ぶ地蔵)が本当にあったので、その道を教えたら『ありがとうございます』と言い残して出ていきました。その女性の顔は、実際に会話したのに全く思い出せないんですよ」

 夜が明けた。吉田は「朝の勤務の人にその話をしたら、『それってオバケなんじゃないですか』と言われました。確かに、あんな時間に地蔵を探すなんてあり得ないですよね。でもオバケがあんなにしっかり会話できるのかなとかも…」と振り返る。

 記者が「防犯カメラでチェックしたのか」と確認すると、吉田は「今になってみると、そうすればよかったのに、なぜか、しなかったんですよ。『心霊映像』として取って置けたのに。2003年か04年の頃だったので、防犯カメラもビデオテープなんですね。何度も重ねて撮るので3日か4日すると消しちゃうんですよ。その時すぐ、消される前に、なぜ同僚と一緒にそのビデオを見なかったのか…。もったいないですよね。もし、誰も映ってなければ幽霊だった…みたいになったのに。あれは(現時点で最初にして最後)最大のチャンスでした」と悔やんだ。

 吉田は昨年、「一人」から「猛々」に改名し、怪談師によるトークバトル「怪談最恐戦」に初出場で準優勝。名字に因縁のある大赤見と共に、改名したことで怪談の世界で飛躍した。2人は「怪談とは自分自身を知る手がかり」という信念を持つに至ったという。亡くなった人も含めて世の中から忘れられた記憶に思いをはせること。「怪談」とは恐い話というだけでなく、異界に通じる、もう一人の自分と向き合うためのツールなのかもしれない。

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