テレビではすべてを伝えきれない 映画「戦場記者」が伝える地球の今 ウクライナ、北朝鮮など

伊藤 さとり 伊藤 さとり
「戦場記者」のワンシーン=©TBSテレビ
「戦場記者」のワンシーン=©TBSテレビ

 「テレビではすべてを伝えきれない」

 そうインタビューで語るTBSテレビ特派員・須賀川拓記者。現在、戦いが続いているウクライナから、北朝鮮ほか様々な地へ足を踏み入れ、カメラの前で語る戦場記者の姿がドキュメンタリー映画となって劇場公開されます。

 そもそもテレビでは放送時間が限られているので戦争のごく一部しか伝えられないのが現状であり、そのことに違和感を覚えてYouTubeやSNSを活用して目にしている真実を大衆に届けることを実施。やがてYouTube配信は平均30万再生以上という人気コンテンツになり、須賀川記者は、国際報道で優れた業績を上げたジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」も受賞しました。

 そんな須賀川記者と撮影クルーが命懸けで伝える戦争の真実を追ったドキュメンタリー映画『戦場記者』が12月16日から劇場公開となります。映画では「僕は喋りすぎるから嫌がられる」という本音も映し出されるほど須賀川記者の“伝えたい思い”は強く、現地の人々に話しかけ、コミュニケーションを取りながら相手の気持ちも配慮した質問を重ねていく姿も。

 衝撃的なのは、空爆によって妻と子ども4人を失い、生き残った乳児を抱いた父親が自分の身に起こった悲劇を世界に伝えたいという思いからカメラの前でその時の状況を自ら語る姿でした。他にもパレスチナ問題となるイスラエル軍によるガザ地区の攻撃における両当局者に質問を投げかけたり、タリバン支配下のアフガニスタンではタリバン幹部への直撃インタビューまでと、実に様々な当事者の言い分が映し出されています。

 本作は今年3月にTBSドキュメンタリー映画祭で上映された『戦争の狂気 中東特派員が見たガザ紛争の現実』に、更なる取材を重ねて各国の現状を伝える戦場レポートになっており、戦場記者という仕事を通して私たちが「世界の争いを知る」映画になっています。

 この事実を知ったことで一体、私たちに何が出来るのか?それについて須賀川記者も同様の疑問を持ちながら今も取材を重ねているという言葉が映画では印象的でした。けれど「世界の現実を知ること」で誰かが救いの手を差し伸べると信じ、「地球の今」を知ることが何より大事であり、政治に目を向けることの必要性を感じずにはいられませんでした。

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