日本テレビ系「笑点」の大喜利コーナーで〝おバカキャラ〟に徹して半世紀以上となる落語家・林家木久扇が18日に「祝85歳林家木久扇誕生日記念落語会」を東京・渋谷区文化総合センター大和田さくらホールで開催する。木久扇がよろずニュースの取材に対し、健康に配慮した日常生活や節目の落語会にかける思いを明かした。
10月19日に85歳となった。2000年に胃がん、14年に喉頭がんを患いながら克服。昨年5月に自宅で転倒して大腿(だいたい)骨骨折という重傷を負ったが、リハビリ生活を送りながら復帰した。
木久扇は「85歳になり、とても気持ちがゆるやかになり、仕事の面でも以前の活気が戻ってきたので、出演依頼のある限り、高座を務めています」と現役生活にさらなる意欲を示す。体調管理も万全だ。「嫌いだったサラダを食べるようになり、血液検査も結果よく、禁酒三年目、快調です」という日々を振り返った。
記念落語会には「笑点」の盟友である三遊亭好楽と林家たい平、長男の二代目林家木久蔵 、弟子で大相撲の元大関清國を父に持つ林家木りんがゲスト出演。木久扇は「たい平師、好楽師がお祝いに駆け付けて下さり、大きなお祭りになりそうです!」と期待を込めた。
今秋、悲しい出来事もあった。「笑点」をはじめ、落語界で共に歩んできた六代目三遊亭円楽さんが9月30日に肺がんのため72歳で死去。木久扇は日本テレビ系の追悼番組で「心に穴が開いたよう」と喪失感を吐露していた。
その後も円楽さんについて多くを語らないが、心の内に大切な思い出をしまっている。その思いが示されたのは、今春出版した著書「バカのすすめ」(ダイヤモンド社)。木久扇は著書の中で、円楽さんについて「偉大な『世話焼きバカ』」と評している。
同書によると、円楽さんは「笑点」の楽屋で毎回、たくさん購入してきたパンをふるまい、土用の丑の日には出演者からスタッフまで全員に「うな重の上」を配っていたという。また、落語界を盛り上げるため、桂文枝や笑福亭鶴瓶ら上方(かみがた)の落語家との橋渡し的役目を務めた。07年からプロデュースする「博多・天神落語まつり」(福岡市)では、落語協会、落語芸術協会、立川流、円楽一門会という東京の四派合同で、上方落語協会の落語家を招いたが、その舞台裏では、切符の手配からホテル部屋の割り振りまで率先してやっていたという。そんな円楽さんに送った「世話焼きバカ」という〝称号〟は最大級の褒め言葉だった。
そして今、円楽さんの不在をどう乗り越えていくかも考えている。木久扇は「円楽師の亡き今、笑点メンバーに新しい芽を迎えて、(今いる)メンバーで大きく育てていきたい。大きな穴を埋めるのは大変です」と思いを明かした。
落語には「与太郎」という名物キャラクターがいる。世間体や忖度とは無縁。時に本質を突いた発言で大人(常識人)を慌てさせ、そこに笑いも生じる。国民的お笑い番組の「黄色い着物の人」として、この「与太郎」キャラに徹して53年。木久扇は今春、当サイトに対して「コロナ禍で出てきた『不要不急』という言葉にはびっくりしましたね。落語や芝居は、どんなことも柔らかく受け入れる『スプリング』であり、文章でいうと『句読点』。生きるのに必要なものです」と訴えていた。
どんな状況でも文化や芸能は人間にとって「必要」なもの。「コロナも戦争もバカで乗り切る」。木久扇は今の世相や円楽さんへの思いも胸に秘め、野菜摂取と禁酒で保つ健康体で85歳の記念落語会に臨む。