上方落語協会は、優れた新作落語の台本を公募で選ぶ上方落語台本大賞の入選作を発表。応募150編の中から、兵庫県宝塚市在住の藤丸紘生(ひろき)さん(25)作「追い込まれたエース」が大賞に選ばれた。賞金は10万円。大阪市の天満天神繁昌亭で6月20日、入選作を落語家が口演する落語会が開かれる。
藤丸さんは17年の「水に流して」、18年の「落としもの」で2度佳作に入選。5度目の応募で、大賞をつかんだ。「大賞は全く頭になかったのですごくうれしかった。アイデアが浮かばず、2年前に作った落語を引っ張り出してきて練り直した」と、苦肉の策で出した野球ネタの落語でホームランをかっ飛ばした。
桂文枝(78)が創設した関西大学の落語研究会・落語大学出身。落語にまったく興味がなかったが、新入生歓迎シーズンで同研究会からの勧誘を断り切れず入会。落語はせず、もっぱら落語会の会場押さえなど裏方をしていたという。
落語の台本を書き始めたのは2017年。学生落語日本一を決める全日本学生落語選手権・策伝大賞に出場する落語研究会の仲間から、創作落語の台本を依頼されたことがきっかけだ。見よう見まねで書いた作品は策伝大賞では日の目は見なかったが、同年の上方落語台本大賞で佳作に選ばれた。
その一本で終わるつもりだったが、同大賞の選考委員長を務める文枝から人づたいに「もっと高みを目指してください」との激励が届いた。「これで次も出さないわけにはいかないと思った」と覚悟を決め、毎回応募。関西大に7年半通いながら、笑福亭智丸(33)の創作落語にも関わった。
本格的に落語作家の道へ…と思いきや、4月からマスコミへの道へ進む。文枝の言葉を励みに、5年後につかんだ栄冠。まだ報告ができていないという。「忘れられていたらショックですが、文枝さんと仕事で関われたら直接報告しようと思います」と、対面できる日を心待ちにしている。