英国人はなぜ「オカルト好き」なのか 日本人と共通する「島国」 識者が指摘

深月 ユリア 深月 ユリア
画像はイメージです( veter/)
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 英国人はオカルト(人知を越えた神秘的な現象)を好むという。ジャーナリストの深月ユリア氏がメディアや研究者の著書などからの引用で解説し、識者からも見解を聞いた。

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 来年、遊園地「としまえん」(東京都練馬区、2020年に閉園)があった跡地にハリー・ポッターをテーマにした博物館「ワーナーブラザーズ スタジオツアー東京 メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が開業する予定だ。映画「ハリー・ポッター」に「ロード・オブ・ザ・リング」などイギリスでは魔法やオカルトをテーマにした映画が大人気だ。

 また、観光客向けにロンドン塔や切り裂きジャックの犯行現場、「マッグス・ブロスの幽霊屋敷」など「幽霊が出る」という噂の場所を巡る心霊ツアーもある。さらに「いわくつきの物」を集めた博物館「ストーク・オン・トレント幽霊博物館」もあり、そこで大人気なのが1953年に作られた「スケアリー・メアリー」と呼ばれる人形だ。イギリスのテレビ番組「ディス・モーニング」で博物館を経営するクレイグ・ロングソン氏が回答したインタビューによると、「スケアリー・メアリーは目が動いたり、彼女が座る椅子は左右に揺れたり、椅子から身を投げたこともある」という。この真偽は定かでないが、「スケアリー・メアリーが夜中に動いた」という監視カメラがとらえた映像はユーチューブで世界中に拡散された。博物館を訪れるオカルトファンは増えていて「夜のナイトツアー」や「降霊会イベント」も敢行されているが、あまりに「出る」ので18歳未満の入館は禁止されているそうだ。

 筆者が6年ほど前にイギリスに取材旅行に行った際にイギリスで大人気の「恐怖と黒歴史の博物館」ロンドンダンジョンを訪れたが、「魔女裁判」、「切り裂きジャッ」ク、「スウィーニー・トッド(人肉を食べる連続殺人鬼の都市伝説)」などの、恐ろしいアトラクションばかりが集まった「オカルトの遊園地」だった。

  イギリス人のオカルト好きは有名だ。旅関連のニュースを扱うインターネットメディア「タビジン」によると、 日本ではいわくつきの物件は敬遠されて値段が下がるが、イギリスでは「幽霊が出る」という噂の物件は、相場の1-2割ほど値段が上がるのだとか。

 なぜイギリス人はオカルト好きなのか?

 英文学者で早稲田大学名誉教授、出口保夫氏の著書「英国ミステリー紀行」「イギリス怪奇物語ーその謎とロマンを追って」などによると、イギリスは魔女や妖精の伝承、オカルトや幽霊が出る「怖い話」の宝庫で、ビクトリア朝時代に流行した神秘思想の影響があるという。また、同氏の著書「怖くて不思議なスコットランド妖精物語」によると、スコットランドのケルト民族は「空想や幻想を好み、想像力が豊か」なので、スコットランド移民からの影響もあると指摘されている。

 中央大学総合政策学部で比較文化を教えていた元講師で文学博士の酒生文弥氏に筆者がインタビューしたところ、 「ケルト人はキリスト教化する以前は魔術的なドゥルイド教を信じていました。その神々や妖怪の名残が、ハロウィーンなのです。ビクトリア時代(1837-1901年)は、イギリス版カソリックである英国教会とピューリタン(プロテスタント)が葛藤する、極めて禁欲主義的な社会でもありました。産業革命の先進国イギリスは、科学・技術万能の風潮もあり、本来の呪術的な欲動は抑圧されていただけに、1897年にブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』が大ベストセラーになったことをきっかけに、コナン・ドイルの交霊会、マダム・ブラバッキーの『神智学』などオカルト文化が一気に顕在化したのです。フリーメーソンたちが創ったオカルト団体『ゴールデンドーン』はタロットカードを完成したことで有名です。この時代は迷宮入りした連続猟奇殺人切り裂きジャックも現れましたね」

 さらに酒生氏はイギリスと日本の類似点を指摘する。「欧米人はよく、『幽霊の多い国』としてイギリスと並んで日本を挙げます。共に雑多な民俗と大陸からの文化が共存する島国。この点もまた考察に値すると思います」

 民俗学や都市伝説に詳しい作家の山口敏太郎氏に筆者がインタビューしたところ、「イギリス人は日本人と共通点がある。島国である、王様を掲げている、そして歴史が古くスピリチュアルが好きな点。特にスコットランドは魔法や妖精の伝承に満ちている」

 日本人も「オカルト好き」とされているが、歴史や地理学的な背景、ケルト民族のシャーマニズム思想と日本古来の「八百万(やおよろず)の神々」の思想も相いれるものがあるのかもしれない。

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