大分県の洋菓子店「マチカ」がこのほど、宮沢賢治の童話「注文の多い料理店」のストーリーに沿って組み立てるクッキー菓子「食べる文学『注文の多い料理店』」を開発した。同店を運営する高見由里さんは「食べるだけではなく、芸術として楽しんでもらえるお菓子が作れたら」と話した。
「お菓子を通して文学を味わう」ためのプロジェクトの第1弾として、「注文の多い料理店」を題材にした。本の中では、山奥のレストランに迷い込んだ紳士が、店内で「服を脱いでください」「壺の中のクリームを塗ってください」「塩を振りかけてください」と指示されるうち、これから料理を食べられるのではなく自分が調理されてしまうと気づき逃げ出す。
「食べる文学―」は、物語になぞらえたクッキーの詰め合わせ。紳士の体に見立てたクッキーの包み紙(=服)を開き、バタークリーム、「香水」代わりのジャム、塩を塗りつけ、物語の”調理工程”を再現する。紳士が「香水」と呼ばれる酢のような液体を振りかける場面は、地元・大分のかぼすを使った酸味のあるジャムで表現した。
高見さんは「ただ食べるだけでなく体験できるものを作りたい」と考え、読書好きだったこともあり「体験」と「文学」の組み合わせを考案した。周囲には物語を詳しく知らない人や、文字ばかりの本を苦手に感じる人もいるといい、「実際に食べて『こういう話なんだ』と分かるのも新しい楽しみ方かなと思う」と語った。
クラウドファンディングサイト「Creema SPRINGS」で、商品化のための支援を募ったところ、寄付締め切りまで1週間以上を残す余裕の日程で目標金額を達成。正式にプロジェクト始動が決定した。同サイトでは28日まで募集を続け、資金はデザイン費やパッケージ製作の初期費用に充てられる。
6月頃からは一般販売も予定する。今後は梶井基次郎の「檸檬」をモチーフにしたお菓子や、怪談を元にした”ひんやりスイーツ”などの制作も検討しているという。