創刊74年の老舗小説誌「小説新潮」(新潮社)の2022年1月号が22日に発売され、「初笑い」特集として、空気階段、Aマッソ、ヒコロヒーら多数の芸人が登場した。表紙に小説家と芸人の名前が並んだ異色企画。西麻沙子編集長(44)は「私の知る限りでは初めてだと思います」と語った。
「2022年のわたし」をテーマにエッセイを寄せたのは8人。飯尾和樹(ずん)とイワクラ(蛙亭)を除き、ヒコロヒー、水川かたまり(空気階段)、山添寛(相席スタート)、上田航平(ゾフィー)、酒寄希望(ぼる塾)、蓮見翔(ダウ90000)は同誌初登場。今年のキングオブコント王者の水川ら人気者が、"2022年の抱負"を文章に記した。テレビ朝日系人気番組「トゲアリトゲナシトゲトゲ」とのコラボ座談会では、加納(Aマッソ)、サーヤ(ラランド)、福田麻貴(3時のヒロイン)の3人が、来年の野望を語っている。もちろん、桐野夏生、森絵都、砂原浩太朗ら、小説の掲載にも力を入れている。
同誌ではこれまで、矢部太郎(カラテカ)の漫画、友近に黒田有(メッセンジャー)や岩井勇気(ハライチ)らのコラムや小説が掲載されるなど、芸人の起用は珍しくないが、特集の形にしたのは異例。西編集長は「どの芸人さんもとても言葉を大切にされていて、面白いなあと以前から思っていました。例えばコントの物語づくりは小説に通じるものがあります。社内でも好意的な意見ばかりでした」と、小説とお笑いの親和性、編集部内にお笑い好きが多かったことを考慮し、企画が始まったという。
芸人のエッセイ8本を読み比べ「飯尾さんはのんびりとしていて、ヒコロヒーさんは寄らば斬るような鋭さがあります。8本だと似たような内容があるかもしれないと考えていたのですが、それぞれが個性的でした。ハハハ、ニヤリ、クスリ、と異なる笑いの要素がしっかり入っていることにも驚きました」と楽しそうに話した。ビートたけし、太田光、又吉直樹ら先駆者をみても、お笑いを磨くことと面白い文章は比例するのかもしれない。
昨年4月に就任した西編集長。今年4月からは表紙に人気漫画家・イラストレーターの益田ミリを起用するなど「親しみやすく、いろいろな方に関心を持っていただきたい」という思いを編集方針に反映させている。来年3月号(2月22日発売)では「お金」の特集を組み、お金をテーマにした小説、投資家と小説家の対談の掲載を予定している。「本誌はあくまでも小説が軸ですが、面白い小説とは世間の動きにつれて移り変わっていくものだと思います。これからも今を生きる多くの人が興味を持つこと、面白そうなことに全力で振り込んでいきたい」と決意を口にしていた。