タガメエキスのサイダー「タガメサイダー」で知られる日本初の昆虫食専門ベンチャー企業・TAKEOの食用「国産昆虫シリーズ」の人気が広がっている。コオロギのほか蚕(かいこ)、スズメバチで「大トロ」をうたうものも。肉や魚のように産地を指定して買う客もおり、ゲテモノ扱いされていた昆虫食が徐々に浸透しつつある。
東京・浅草にある同社の実店舗「TAKE―NOKO」。イートインスペースもあり、タガメサイダーに食べられるタガメのシロップ漬け、卵っぽいタピオカなどをプラスした「めっちゃタガメサイダー」は独創的すぎるビジュアルでSNSで話題を呼んだ。
デパ地下の昆虫食フェアなどでも、環境問題への意識が高い女性客にひときわ売れていたのが昆虫の煮干しやくん製。TAKEOでは現在9種類の「国産昆虫シリーズ」があり、塩味でお茶漬けにぴったりという限定生産品の蚕のさなぎ「京都かいこ」は実店舗では売り切れだった。
店長の三浦みちこさんは「コオロギはえさによって味の影響を受けやすい。産地の県の特色を生かしたり、出していきたい」と話す。2021年11月に発売したガーリックマッシュルーム味の「山形こおろぎ」は、山形産のマッシュルームスライスとにんにくをミックス。コオロギとマッシュルームは風味が似ているといい、アヒージョにおすすめだという。
アーモンドを主食にした「広島こおろぎ」は、脂がのった大ぶりのコオロギをロースト。「コオロギ界の大トロ」と銘打たれた。実際に食べてみると、ほんのりアーモンドの香りが。冷凍ものはより、甘い脂が感じられるという。
商品開発も手がける三浦さんは「ご当地の味を提案したい。形をそのままにして提供したいし、地域の特色を楽しんでもらいたい」と意気込む。外見から、初購入時では心理的ハードルが高いものの、リピーターになるとお気に入りの産地を指定する客も多い。
同社CEOの斎藤健生さんには「育った土地や生産者を表示するのは肉や野菜と同じ」との理念がある。三浦さんは「昆虫食を目に触れる機会も多くなって、ニッチだったものが徐々に広まってきた。一般的なものになっていくと思う」と、老舗の手応えを感じていた。
雑食の昆虫で、捨てられる食品をえさにして育つコオロギはタンパク質などの栄養価が高く、食品ロスと食糧問題を一気に解決する循環型食材(サーキュラーフード)として大きな可能性を秘めている。ちなみに、同店が2月上旬に期間限定の新メニューとして計画中なのが「マダゴキスープカレー」。蟲(むし)ソムリエの佐伯真二郎氏監修による食用のマダカスカルゴキブリのスープカレーだそうですが、これを食べるにはちょっと勇気がいるかも…。