漫画「AKIRA」の原作者で、同作のアニメ監督を務め、〝ジャパニメーション〟を世界に広げた作家・大友克洋氏(67)が5日、自身の全集「OTOMO THE COMPLETE WORKS」(講談社)のメインビジュアルを公開し、「出し惜しみせず全てお見せいたします」と意気込みを示した。
大友氏自身が企画し、時代順に全作品をまとめた全集の第1期・第1回配本が、今月21日より刊行開始。世界中に衝撃をもたらした「AKIRA」をはじめとした、まったく新しい表現方法の集積は、一人の作家のパーソナルな仕事集というだけでなく、1970年代から現代までの漫画、アニメ、映像までをも含む、現代文化の冒険を楽しめる作品集といえる。
大友氏は「長らく過去の単行本が絶版状態にあり、これまで各社から再販や選集出版のお話をいただきました。それなら自分の仕事をまとめた全集を自分の思うような形で作りたいと思い、本プロジェクトがスタートしました。自分でプロデュースするなら、自分が生きているうちにということになりますので、今のタイミングかなと。 そして、どうせ出すならコンプリートワークスということで、全部をまとめてみたいと考えました。マンガだけでなく、アニメーションや実写映画などの仕事もやっていますし、イラストも描いてますし、原作の提供やシナリオなどもあるので、それらもひとまとめにしたいなと」と、経緯を語った。
異例の試みとして、全集にはアニメ映画「AKIRA」絵コンテ集、映像ディスクが収録されている。この点に関して「これまで色々な人が全集を発表しています。例えば手塚治虫さんの場合、手塚さんはマンガ以外の仕事も多くされてるんですが、全集にはマンガしか収録されていません。それはその人の仕事の全集としては不完全なのではないかという気がしていました。もしかしたらシナリオ集なんかはあまり売れないのかもしれませんが、ひとまず形にはしてみたいなと思ってラインナップに入れています」と説明。「マンガというのは、コンテンツとして非常に広い展開をします。アニメ化、実写化、小説化、ゲーム化やパチンコなど…。私の作品はパチンコの展開はないですが。そのように展開した部分でも、携わってきたものも全て含めた構成になる予定です。最近はパブリックアートなども手掛けているんで、自分の仕事もさらに多様化していますね。そのためになかなかマンガが描けていません。勿論これから描く作品、撮る映画などもあります。それらをどこまで含めて〈全集〉とするのか、実は現段階ではまだ決めていません。とはいえ、どこかで確定しなくてはいけないですね」と続けた。
全集の特徴として「また、可能な限りにはなってしまいますが、作品は制作順に時系列で収録していきます。そうすることで、作家としてどのように変化してきたかも追えるようになるので、本当は収録したくなかった古い作品や実現しなかった作品、未完のものも、出し惜しみせず全てお見せいたします。自分でも過去作品を見直すことはあまりないので、全て見るのはこの編集作業で初めてになると思います。ヘタすると忘れている作品もあるので、見直すと面白いですね」という点も挙げた。「最初の頃から見ていくと、自分でも絵が上手くなっていく過程が判ります。描き方が変わっていったりテーマが変わっていったり、試行錯誤している様子も判ります。色々な見方が出来るので、皆さんにも楽しんでいただけるのではないでしょうか」と意気込みを口にした。
◆「OTOMO THE COMPLETE WORKS」第1期ラインナップ(全6回刊行予定)は次の通り。
第1回配本(2022年1月21日)、第8巻『童夢』(漫画)、第21巻『Animation AKIRA Storyboards 1』(アニメ映画『AKIRA』絵コンテ集 第1巻)
第2回配本(2022年3月予定)、第2巻『BOOGIE WOOGIE WALTZ』(漫画)、第22巻『Animation AKIRA Storyboards 2』(アニメ映画『AKIRA』絵コンテ集 第2巻)
第3回配本(2022年5月予定)、第3巻『ハイウェイスター』(漫画)、第25巻『Scripts 1』(シナリオ集 第1巻)
第4回配本(2022年7月予定)、第20巻『Animation AKIRA』(映像Disc付き書籍)、第4巻『さよならにっぽん』(漫画)
第5回配本(2022年9月予定)、第5巻『Fire-Ball』(漫画)、第35巻『The Live Action 蟲師』(映像Disc付き書籍)
第6回配本(2022年11月予定)、第1巻『銃声』(漫画)