人気特撮番組「ウルトラマン」(TBS系で1966年7月から67年4月まで放送)では具体的に描かれなかった「設定」があった。お笑い芸人、プロレスラー、特撮キャラクターの収集家として知られるコラムニストのなべやかんが、同作を手掛けた人たちの著書から、放送されなかった「裏設定」をひもとく面白さをつづった。
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作品作りをする時、様々な事を考える。TVドラマでも漫画でもアニメでも映画でも、各キャラクターの出身地、家族構成、性格、特技、等々を考え、それらを踏まえ、台詞の言い回しやそのキャラが言いそうな事や言わなそうな事を決めていく。組織や団体であれば、そこがどんな所でどういった流れで作られ現在に至るのかなど。
こういった決め事を「設定」と言い、設定資料が肉厚であればあるほど物語が作りやすくなっていく。つまり、設定と言うのは、表に出てこない物だから映像などでは見えてこない部分でもあるのだ。
『ウルトラマン』を作った時にもこういった設定が多々あった。そんな見えない部分がわかるのが、ウルトラマンの企画と脚本を手掛けた金城哲夫著・小説『ウルトラマン』と円谷プロの創業者・円谷英二監修のノーベル書房『怪獣大全集 円谷怪獣のひみつ』である。
金城さんの小説では、ドラマ本編では描けなかった細かな部分が書かれている。例えば、科特隊がどういった組織であるかという事。科特隊の日本支部は5人1組の班が20、合計100人の隊員で構成されていて、競争率1400倍という狭き門の科特隊養成所を通過しないと隊員になれないようだ。
養成所では朝5時に起床し、スーパーガンの発射練習。午前中は勉学に励み、午後からは50種目のスポーツを習う。夕食後は宇宙学、怪獣学を学ぶ。その他、ビートル機に半月分の食料を積み、1人で1か月飛び続けたり、真っ暗な部屋で2か月間生活したり、空中ブランコの上で1週間生活したり、ジェットコースターに1日中乗り続けたりの訓練がある。もちろん、これらはドラマでは描かれていない。
円谷監督監修『円谷怪獣のひみつ』でも科特隊の事が書かれている。昭和29年、ゴジラ出現に驚いた日本政府は「怪獣ゴジラ対策本部」とは別に技術開発局に「対宇宙防衛研究」をさせ、それが科特隊に発展。その当時、少年だった科特隊・ムラマツキャップは山根博士のもとで働いていた。山根博士とは『ゴジラ』で志村喬さんが演じた山根博士の事では?
作品作りの前には事を色々と考えていくものだ。会社の垣根もあるので、現在では認めたくない部分もあるだろうが、当時はこういった感じで設定をどんどんと作り、膨らましていったのだと思う。設定を紐解くのは面白い。こういった裏設定が『シン・ウルトラマン』で描かれていたら面白いのにな~。