入浴介護スタッフの転倒に注意!介護者への負担にも、「ヒヤヒヤ仕事」の解消策でサンダル開発

北村 泰介 北村 泰介
浴室での入浴介護スタッフの転倒を防ぐために開発された「ワークサンダル」
浴室での入浴介護スタッフの転倒を防ぐために開発された「ワークサンダル」

 入浴介護のスタッフが浴室の濡れたタイルでなど足を滑らせて転倒しそうになるケースがあるという。そうした事故を防止すると共に、長時間の立ち仕事にも対応する機能を持った履物が、介護用品開発の「フットマーク」(本社・東京都墨田区)から発売された。商品名は「ワークサンダル」で、抗菌加工をプラスしてリニューアルされたという。同社の開発担当者から現場の切実な声を聞いた。

 同社では、以前から入浴介護スタッフが着用するエプロンやウエアなどを販売してきたが、現場からの困りごとやご要望を耳にすることが多く、そこから生まれた商品のひとつが「ワークサンダル」だった。

 同社の担当者は「介護施設や病院などで入浴介護を行うスタッフの方は、水やせっけんで足元が滑りやすくなっている環境で仕事をしています。最近では滑りにくい床や滑り止めシートを採用している施設も増えていますが、タイルの浴室もまだ多くあり、その中で介護者を支えなければならないスタッフもおられます」と背景を説明。「スタッフ自身が転倒することで介護者へ負担をかけてしまうためヒヤヒヤしながら仕事している」という話から商品が生まれた。

 そこで、実際にあった介護施設の声と同社の対策をまとめた。

 「タイルのお風呂だと石鹸水で滑りやすいため、慎重になり、時間がかかる」

 この声に対して、同社は「すべりにくいソールが必要」と考え、滑り止め効果の高い特殊な凸凹形状ソールを底の素材とした。

 「機械浴で足をぶつける」

 機械浴とは、重度の障害がある人をストレッチャーに寝かせた状態で、あるいは、座ることができる人であればキャスターがついたイスに座った状態で入浴してもらう作業となる。その際に使う装置に足をぶつけるケースだ。特に、つま先は痛い。そこで「つま先があった方がいい」ということで、足の甲とつま先を覆うようにした。

 「(履物の)穴から石鹸水や水が入り滑りやすくなる」

 これでは足に不快感がある。「空気穴は脇のみでトップはフラット(穴なし)」とした。

 「長靴は水が入るとペチャペチャで動きにくいので、スタッフの人も嫌がるし、履き心地が気持ち悪い」「入浴から部屋までの移動までを1人で行うため、脱ぎ履きしやすい方が良い」

 靴の中に水が入りにくいように「サンダルタイプ」とし、サイドに穴を空けて水抜けと通気性を確保。かかと部分は深めにして脱げにくくした。バンドを甲の方に倒せばすぐ履け、 かかとに装着すれば脱げにくくなる。また、取り外し可能なクッション・インソールを入れて長時間の立ち仕事でも疲れにくくした。室内ではインソールを装着し、浴室では取り外して使う。清潔感を保つため、抗菌加工を施し、色は汚れが目立つ白からネイビーに変えた。

  「エプロンとサンダルは共有。水虫など気になるので個人で購入し、持参する人がいる」

 やはり、共有せずに、個別に持っていた方がいい。そのためにも「機能性がありながら購入しやすい価格帯に。水陸で履けるサンダルという付加価値」を心がけたという。

 同社スタッフは「今回のリニューアルは現場でのコロナ禍における衛生面への関心の高まりがきっかけでした。1枚の入浴介護用 のエプロンを着まわして数人で使用していた介護施設も1人1枚自分用のエプロンを使用するようにしたという介護施設もありました。スタッフの方々に入浴介護を行う環境についてどう変化しているかお話を聞き、その中でも要望の多かった『足を常に衛生に保てる抗菌加工の追加』と『本体の色を汚れの目立たないネイビーに変更』という2点を改良しました」と説明した。

 滑りにくい特殊ソールで入浴介護スタッフの足元を支える「ワークサンダル」は23-27センチの5サイズ。価格は 3960円(税込小売希望価格)となる。

 介護する側も、入浴作業においてリスクがあるということがクローズアップされた。まさに、足元を見つめながら、さらなる対策が必要とされている。

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