主に1990年代、2000年代にブームとなった格闘ゲームの対戦機会を提供し続けるゲームセンターがある。有名なのは東京・高田馬場の「ミカド」で、YouTubeのチャンネルで大会や企画、フリープレイの動画を配信することで、来客数の増加につなげている。登録者数8万7000人を誇り、NHKで特集が組まれるほどの〝第一人者〟となっている。関西でも同様の試みが行われているが〝絶対強者〟は不在で、各地のゲームセンターが奮闘している。その一つ、兵庫・三ノ宮の「遊スペースマジカル」の店長に話を聞いた。
JR三ノ宮駅東口から徒歩1分のビル2~4階に店舗を構える。2階は最新の対戦ゲームとともに、90~00年代のレトロゲームが並んでいる。平日夜や週末にはストⅡ、VF、餓狼、鉄拳、KOF、サムスピなどの各タイトルで対戦するため、主に30~40代が集う。同店は2015年7月にリニューアルした際にニコニコ動画で生配信をしたことを契機に、17年6月にyoutubeチャンネルを開設。18年10月からは配信を行うことを条件にフリープレイを提供する企画を開始。コロナ禍の影響で今年2月からは半額プレイに変更されたが、配信動画数を底上げしている。
店長は「旧作と呼ばれるゲーム機が現役の時代からマジカルでは、対戦ゲームが主流でお客様も非常に多く盛り上がっておりました。ビデオゲームを衰退させてはいけない思いが強く、売上が厳しい時代でも、お客様に支えられながらビデオゲームの設置を継続して参りました」と振り返った。チャンネル開設を機に来客が増え、来客同士で新たなイベントが催される相乗効果があった。同店では特に1993年発売の「餓狼伝説スペシャル」の配信が活発で、多い時には20人程が参加して動画を盛り上げる。コロナ禍で大会の開催は控えているものの、対戦動画の配信が続いている。
関西ではレトロ格闘ゲームの動画を「マジカル」同様にYouTube配信するゲームセンターは少なくない。大阪では南森町「コーハツ」、布施「ENJOY PARADISE」、京都は寺町「a-cho」など。それぞれで得意とする配信ゲームタイトルが異なる点が特徴だ。
日本アミューズメント産業協会によると、ゲームセンターの店舗数は2010年の1万8638から、直近の19年は1万2212に減少。「マジカル」もコロナ禍で常連客が遠のくなどの影響を受けた。それでも三国志大戦、ボンバーガール、戦場の絆Ⅱなど配信が盛んな新作タイトルが出てきた。店長は「過去の名作を使って〝ビデオゲーム文化〟を存続させたい思いはあります。ゲームセンターでの対戦を盛り上げる事でゲーム人口を増やし、再びビデオゲーム人気が出てくれることを期待しています。その中で、ゲーム配信で〝上手いプレイヤーがどんなプレイをしているのか?〟を動画で見てもらい、お客様のモチベーションアップにつながってくれればと思います」と願った。動画で若かりし頃の熱気を思い出し、再びゲームセンターに足を向ける。そんな大人が増えることは、日本が誇るゲーム文化を支えることにつながるのではないだろうか。