ロックバンド「筋肉少女帯」や「電車」、ソロなどさまざまな形態で音楽活動を行っている大槻ケンヂ(55)が昨年、ロックバンド「特撮」の20周年を迎えた。5年ぶりとなる特撮のニューアルバム「エレクトリック ジェリーフィッシュ」を先月、リリースした大槻に、新型コロナウイルスがまん延する世界を色濃く反映した新作と、現在の心境について聞いた。
本作は主にギター、サウンドプロデュースを担うNARASAKIが作曲し、ハードロック、ソフトロック、ラップや8分間の長尺曲など、大槻の「ホントに楽曲の振り幅が大きいなと」という言葉通り、豊かな音楽性を内包している。
それを受けて書かれた大槻の歌詞には、コロナ禍の影響が漂う。トピカルなテーマを避ける日本のアーティストは多いが、大槻は「どうしても歌詞を書く者は、コロナ禍ってのには影響されることに」なるという。
フィクションの世界では現在、例えばテレビドラマではコロナありの作品となしの作品が共存しているが、本作はコロナありだ。
「ステイホームで人と会わないようにするっていう状態はSFめいているし、言うたら文学的、観念的な世界に突入しているじゃないですか。だから歌詞にもそのことは影響せざるを得ない」
「日常を取り戻せる」と歌う「オーバー・ザ・レインボー」や、ステイホームの心境を歌う「電気くらげ」に「ヘイ!バディー」、自粛や密というコロナワードを織り込んだ「I wanna be your Muse」などの楽曲がコロナ禍を連想させる一方、「コロナ」という言葉自体は使われない。
大槻は「コロナのことばかりになると好ましくはないので、そこら辺がとても微妙でした」とさじ加減の苦心を明かしたが、結果、楽曲はコロナ禍にとらわれない普遍性を帯びることになった。
コロナ禍が本作の背景なら、キーワードは「ネタバレの世界」だ。「電気くらげ」、「喫茶店トーク」などで使われ、後者では往年のプロレス週刊紙「週刊ファイト」の井上義啓編集長がプロレスを表した名言「底が丸見えの底なし沼」を引いている。