「『底が丸見えの底なし沼』っていうのは非常に今の社会、世界をうまいこと表しているなと思って。終わりが見えている人生の中で、なぜ終わりが見えない日々をわれわれは送るのかっていうことですよね。やがては皆、全て消えてなくなってしまうのに」
本作を締めくくる「ネタバレの世界で生きていくための方法」では「サウンドがとても前向きだったので、それに引っ張られてっていうところはありますね」という、「ネタバレの世界」を生きるための「解答みたいな」ことが歌われる。
大槻は「後付けですが」と断りつつ、「全てはなくなってしまうというラストはバレてるのに、終わりのない状況の中で人は生きていかなきゃならないという矛盾の要素こそが人生だみたいなことを、今回アルバムで歌ってみたいなと考えました」と語る。コロナ禍、そしてその終息後も続く世界で生きるための考え方が、本作では示されている。
◆大槻ケンヂ(おおつき・けんぢ) 1966年生まれ、東京出身。88年、バンド「筋肉少女帯」でメジャーデビュー。2000年、バンド「特撮」結成(現メンバーは大槻=作詞&ボーカル、NARASAKI=ギター&サウンドプロデュース、三柴理=ピアノ、ARIMATSU=ドラムス)。ユニット「空手バカボン」、ソロなどさまざまな形態で活動。優れたSF小説に贈られる星雲賞の日本短編部門を94、95年に「くるぐる使い」、「のの子の復讐ジグザグ」で連続受賞するなど、作家としての評価も高い。