累計78億食!「松茸の味お吸いもの」誕生ストーリー 伸び悩んだ2000年代「アレンジレシピ」で状況一変

よろず~ニュース編集部 よろず~ニュース編集部
永谷園「松茸の味お吸いもの」の小袋デザイン(現在)
永谷園「松茸の味お吸いもの」の小袋デザイン(現在)

 永谷園のロングセラー商品「松茸の味お吸いもの」は、今年で発売60周年を迎えた。汁物はもちろん調味料としても使える優れもので、発売からの累計食数は78億食にのぼる(24年3月末実績から算出)。同社はこのほど、「松茸の味お吸いもの」誕生ストーリーを公開し、開発秘話などを明かした。

 1964年10月、日本中が沸いた東京オリンピックと時を同じくして同商品は発売を開始した。創業者の永谷嘉男氏が料亭で松茸のお吸いものをおいしそうに飲んでいる客の姿を見て「家庭で手軽に楽しめる商品を開発すれば売れるのでは」と考えたことが始まりだったという。

 52年に発売開始した「お茶づけ海苔」の原料や製造ノウハウを元に開発に着手。商品化のカギは「松茸風味のバランスを整えること」。風味が強すぎても弱すぎても駄目という難問だった。

 当時、原料メーカーからはエキス・香料などさまざまな調味料が数多く開発され普及しつつあった。初めて取り扱うエキスや香料を調達しては味・香りを吟味する日々。松茸ざんまいの日々はぜいたくにも思えるが、当時の開発担当者は食傷気味になったという。

 試行錯誤の末に商品は完成したが、次なる課題はどうPRしていくか。当時、関西では「すまし」と呼ばれ定着していたお吸いものだが、関東ではみそ汁が中心であまりなじみがなかった。そこで「餅を入れて雑煮感覚で」「炊き込みご飯にして」など汁物以外のアレンジレシピも織り交ぜてCMを展開。松茸の高級イメージも相まって広く利用されるようになった。現在ではおなじみとなった「アレンジレシピ」だが、実は発売当初から行われていたのだ。

 2000年代に入ると食卓での出現シーンが減り伸び悩んだ。この状況を変えたのが、07年に実施した「アレンジレシピ提案」だった。

 商品担当者が購入者アンケートに目を通す中で「お吸いものではなく調味料として利用している」という声が一定数あることが判明。「茶碗蒸し」「炊き込みご飯」などバリエーションは広く、なかでも「パスタ」は同担当者の目を引いた。

 07年9月、ゆでたパスタとエリンギに「松茸の味お吸いもの」を絡めるだけの「エリンギの和風パスタ」をCMで発信すると反響は上々。伸び悩みを打破し、その後「土瓶蒸し風小鍋」「雑煮」「釜玉うどん」などアレンジレシピのバリエーションは増えていった。

 同社が23年7~9月にかけて、同社サイトWEB会員に向けて実施した「思い出の永谷園商品」アンケートでは、1位の「お茶づけ海苔」に次ぐ2位にランクイン。「子どもの頃、松茸はこれの事だと思っていました(本物の松茸が別に存在するとは思わなかった)」、「調味料として料理に使うのは当時として斬新でした。今でこそSNSでアレンジレシピとして見ることはありますが、あの頃は『へ~こんな使い方もあるんだ』と感心しました」などの思い出が寄せられた。

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