ダウンタウンや堂安律などバイタリティ溢れる著名人を多く輩出する兵庫県尼崎市。大都会大阪から、電車で数分の好立地でありながら下町的な風情と人情にあふれる街だ。
そんな尼崎には「尼崎あんかけチャンポン」というソウルフードがあるらしい。
「らしい」というのには理由がある。筆者は尼崎出身・在住にもかかわらず尼崎あんかけチャンポンのことを知ったのは数年前。今ではすっかりファンの1人だが、市民の認知度は6割程度しかないように思う。それは何故か。
気になった筆者は、1956年から続く老舗「星屋」の店長で、任意団体「チーム尼崎あんかけチャンポン」の初代会長(現在顧問)の赤星典秀さんに話を聞くことにした。
赤星:尼崎あんかけチャンポンは、昔からありますよ。この店は元々父が創業したのですが、オープンの頃にはお客さんに「お前の店はあんかけとちゃうんか?」と言われていたようなので、その頃には尼崎の多くのお店が、あんかけチャンポンを出していたと思います。
ーーなぜ、あんかけ?
赤星:諸説あるみたいですが、商工会議所の人たちと調査をした結果、工業や出稼ぎの街でさっと食べられるものを目指していたようです。少なくとも、1960年頃には父は出していたはずです。
ーーお店によって味が違うのですか?
赤星:はい。例えばうちは、ダル麺という九州で食べられているチャンポンです。尼崎あんかけチャンポンは、あんがかかった麺であればなんでもいいので、うどんで提供しているお店もありますね。現在、チームあんかけチャンポンで把握しているのは約20店舗。それぞれの持ち味を活かして提供しています。
ーーチャンポンの大会があると聞きました。
赤星:年に1回開催される、WCC(ワールド・ちゃんぽん・クラシック)に尼崎あんかけチャンポンで何度か出店しています。2016年には尼崎でも開催しました。作る速度を競うなんていうエンタメ要素も高い大会で毎度大好評です。尼崎あんかけチャンポンが盛り上がってることを、もっと尼崎の人にもっと知ってもらいたいですね。
ーーちっちゃいおっさんとのコラボもあったとか?
赤星:カップ麺が期間限定で販売されたことがあります。あの頃はゆるキャラブームで、結構売れたんじゃないですかね。
◇ ◇
ということで、星屋のチャンポンをいただきました!
海の幸に山の幸、さまざまな具材が入っていることに驚く。それらがあんによって麺に絡みつく。麺料理を、最後まで満遍なく食べるのは難しいが、最初から最後まで具と麺をバランスよく食べ切ることができた。これがあんかけの力……?何故、普通のチャンポンにはとろみがないのだろうと疑問に思ってしまうほどに、違和感なく平らげてしまった。
そして、麺料理ではあるが、具沢山なので罪悪感も比較的少なく感じた……(笑)。
取材に同行してくれた、同級生で尼崎出身在住の会社員のHさん(34)も美味しさに唸る。
H:めっちゃ、美味しい。僕も尼崎あんかけチャンポンの存在を最近知りました。チャンポンって常に食べたいものではないけど、ふいに話に出た時とかに無性に食べたくなりませんか?尼崎にたくさんのお店があるみたいなので、巡ってみたいですね。
◇ ◇
尼崎あんかけチャンポンを盛り上げたのは10年以上前の尼崎商工会議所青年部の調査がキッカケなのだという。地域振興グループの橋本さんにも話を聞いた。
橋本:尼崎あんかけチャンポンを盛り上げよう、と当時の青年部によって調査がなされました。正確なデータがあるわけではなく尼崎であんかけチャンポンを出しているお店に聞き取りを行い、歴史を想像しています。尼崎あんかけチャンポンを紹介するサイトにも「工場の近くには、必ず、あんかけチャンポンがあった(?)んです」と、言い切らないようにしています(笑)。
ーー反響は?
橋本:徐々に認知されてきているとは思います。これまではザ・男飯というイメージでしたが、実は野菜が多く摂れるので、女性にも是非食べてほしいと思っています。尼崎市内外の認知度をさらに広げるべく頑張っていきます。
◇ ◇
なお、阪神尼崎駅すぐの尼崎観光案内所には、持ち帰り用の尼崎あんかけチャンポンもあった。
かねてより尼崎の人は、お土産と言うと神戸のお菓子や、大阪名物を持っていきがちである。これからは尼崎あんかけチャンポンをカバンに忍ばせてほしい。
◆星屋(ホシヤ)
所在地:兵庫県尼崎市七松町1丁目3−1−122 フェスタ立花南館 1F
電話番号:06-6416-4374
定休日:不定休