42歳の『X-MEN』出演俳優を襲った虫垂がん 症例少なく様々な様相、症状が出にくいケースも 医師が語る

谷光 利昭 谷光 利昭
画像はイメージです(marchsirawit/stock.adobe.com)
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 気分転換によくマーベル映画を見ます。特に『X-MEN』シリーズは好きで、「―フューチャー&パスト」は傑作だと思っています。先日、その作品に出演していた“炎のミュータント”サンスポット役の俳優、エイダン・カントさんが、虫垂がんで亡くなったとニュースで知りました。42歳、奥さんと幼い子供さんを残してだとか。驚くとともに非常に残念です。

 死因は虫垂癌(がん)だそうです。盲腸という言葉はよく耳にする言葉で、よく患者さんに「以前に盲腸をした」と言われる方が多く見られます。しかし、正確な病名は虫垂炎です。

 大腸と小腸の接続部分は大腸の側壁に小腸の末端が繋がる形になっています。その接続部分の盲端の部分を盲腸といいます。さらにその盲腸の先端についた太さ5ミリ大、長さ5~6センチの管腔の臓器を「虫垂」と言います。この小さな臓器がなぜ、人体にあるのか、実は詳細不明なのですが、免疫に関わっていると言われています。

 入口が狭く管腔が狭いために便などが詰まると炎症を起こして、虫垂炎になります。非常に稀ですが、ここに癌が発生することがあります。大腸癌の約0.2%ぐらいとされています。

 虫垂の壁は、大腸と比べると非常に薄く、癌が発生すると容易に壁を破って、周囲に浸潤していきます。炎症があれば痛みで気が付くことができますが、末端で袋状になっている小さな臓器ですから癌が発生しても症状が出ずに、静かに進行していくと考えられます。

 大腸内視鏡検査をして虫垂の入り口を確認することはできますが、内腔を確認することは不可能なのです。ですから、かなり進行した癌であれば、入口に顔を出して組織検査で診断することができますが、虫垂の末端にできた癌では無症状まま進行していきますので、CTなどの画像検査で診断をするしかありません。

 時折、虫垂炎の診断で手術をして早期の虫垂癌であったいう報告も見受けられますので、臨床的に虫垂炎であったとしても、病理学的に悪性所見がないかを確認することは大切です。

 虫垂癌は、他の大腸癌とくらべて粘液を産生する粘液癌を多く認めるのも特徴の一つです。症例が少なく、病理組織学的に様々な様相を呈するために、治療法や術後の検査に関しても定まったものがないのが現状です。

 しかしながら、大腸癌に準じた治療が行われ、予後の改善に全力で臨んでいます。未知の部分の多い癌ですが、今後の進歩に期待が持たれている分野です。

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