日本テレビ系連続ドラマ「セクシー田中さん」(日曜午後10時半)で、劇中に作品のテーマとして登場する「ベリーダンス」が話題になっている。近年、健康やダイエット効果などがあるとして女性に注目されているが、その歴史や発祥したイスラム社会ではどのような存在なのだろうか。ジャーナリストの深月ユリア氏がベリーダンスの女性講師に話を聞いた。
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木南晴夏演じるドラマ「セクシー田中さん」の影響でエジプト発祥の踊り、ベリーダンスの人気が急上昇している。ドラマは、昼間はまじめなOLだが、夜はセクシーなベリーダンサーとして活躍するマイペースなアラフォーOL、田中さんと「変わりたい」「自分らしく生きたい」と願う人物たちを描いている。ベリーダンスは実際に女性を「変える」のか。
東京都にあるスタジオ・ベリーダンスコミュニティの代表・ベリーダンス講師のモカ氏に取材した。モカ氏でベリーダンス発祥の地、エジプトでもダンス留学をしている。
-ベリーダンスとは何か。
「世界で最も古いダンスで、昔は神様に捧げるダンスでした。古来のメソポタミア文明時代の壁画には神殿で踊る様子が描かれていて、それはベリーダンスではないかといわれています。また、当時作られた『豊穣』を願うとされるための土偶には女性の胸とお尻が豊満な形をしていています」
メソポタミア文明時代のエジプトは森羅万象の万の神々を信仰する多神教であったとされるが、時を経てアラブ社会はイスラム教が主流となり、現在のエジプトではベリーダンスに対する考え方は異なるという。
「現在のエジプトでは、ベリーダンスは『縁起物』とされ、結婚式の余興で踊られることが多いです。イスラム教において女性は肌を露出するのはタブーとされているので、盛り上がりますね(笑)。ただし、エジプトのことわざに『ベリーダンサーは結婚式に演者としては呼ばれるけど、親族としては呼ばれない』というものがあります。イスラム社会のタブーに触れるので差別されるんですね。私はエジプト滞在中、ベリーダンス留学していることを隠していました。 売春婦同然に見られて結婚もできません。酷いときは、石を投げられたりするので、もう命がけですよ」
「石を投げられる」-。耳を疑う言葉で、まるで「魔女狩り」のようだ。
「ただし、トップダンサーになれば話は別です。トップダンサーは、女神のように敬われます。つまり、『売春婦』か『女神』しかいない、中間がない超格差社会。例えば、エジプトの有名ダンサー、ディーナさんはエジプトでは有名芸能人として扱われ、結婚相手も選びたい放題、何度も結婚と離婚を繰り返しています」
-昔のイスラム社会ではハーレム(一夫多妻制が認められているイスラム社会で、妻たちが住む後宮)の王様に捧げるために踊られたダンスだといわれますが、『床上手(とこじょうず)』になるとか。
「腰の筋肉が発達しますから、間違いないです。ただし、元々は『男性に捧げるダンス』ではなく、自分自身の『女神』としての女性性を高めるダンスです。ベリーダンスを踊ると、精神的にも自分自身の女性性を肯定し、自己肯定感上がります。生徒さんたちを見ても明るくなったり、女性らしくなったり、『モテるようになった』話も聞きます。『リアル田中さん』がたくさんいますよ」
-ご自身もベリーダンスを始めて変わりました?
「日本社会って多かれ少なかれ、未だに男尊女卑とか、女性が男性に『何かして尽くさなければならない』って文化がありますよね。でも、ベリーダンスを始めたことで『女としてありのまま愛されて当たり前』だと思うようになりました」
「女性は女神」であり、「ありのままに愛されてよい」。「田中さん」魅力も、そこにあるのかもしれない。