日本最古の遊園地として知られる東京・浅草の浅草花やしきが、2023年8月7日に開園170周年を迎えるのを前に、新しいアトラクションなどを備えた新エリアを20日にオープンする。19日に報道陣に公開した。
既存のお化け屋敷を「四谷怪談」など江戸四大怪談をモチーフにしたものにリニューアルしたほか、浅草を一望しながら過去をたどる映像型アトラクション、専用デバイスを使いAR(拡張現実)で現れる妖怪を探す園内周遊型アトラクションなどを新設した。
新たな飲食エリアでは、花やしきの運営会社が登録商標をもつパンダカーを模した焼き菓子「パンダカー焼き」が8年ぶりに復活する。1953年(昭和28)から稼働する日本最古のコースター「ローラーコースター」も現存。デジタル技術を駆使した屋内型最新アトラクションと、レトロ感満点の乗り物が同居する都市型遊園地となった。
1853年(嘉永6)に、花園として開園。動物園、見世物小屋として姿を変えていき、現在のような遊園地の形になったのは1949年(昭和24)だという。浅草花やしきは、東京の子どもたちの〝遊園地デビュー〟の場として親しまれる。
同園の運営会社・株式会社花やしきの西川豊史社長(59)は「やはり屋外施設なものですから、かなり天候に左右される。雨だとか暑いとなると、来場者は減る。屋内のコンテンツを充実させ、お客さんに楽しんでもらうというところからスタートした。ファミリーや地元の人は最も重要ではあるんですけど、若い人や外国人観光客をターゲットにしている感じ」と、新エリア開設の狙いを明かした。
新エリアのオープンと並行して、1949年からある体験型アトラクション「ビックリハウス」を昭和レトロなデザインに戻した。「古くていいものはそのまま活用しつつ、ちょっとアップデートしていき、新たな試みをやる中で、花やしき自体が花園(はなえん)から動物園に変わり、見世物小屋に変わり、遊園地に変わっていったように、その時代に沿った要素を入れていくことが花やしきらしさ」と話す。
ペリーが黒船に乗って浦賀に来航した年に産声を上げた遊園地は、地域のランドマークとなった東京スカイツリーがそびえ立つのを見守った。広さは「東京ディズニーランドのビッグサンダーマウンテンひとつより狭い」(広報担当者)1800坪。高度経済成長期を彩ってきた遊園地の閉園が相次ぐ中、浅草花やしきが関東大震災や第二次世界大戦、コロナ禍を乗り越え、170年も営業し続けられる理由を聞いてみた。
ゲームメーカーのナムコ出身の西川氏は「元いたナムコの創業者の中村雅哉がちょいちょい言ってたんですけど、ダーウィンの進化論を活用して『強いものとか賢いものが生き残るんじゃなくて、変化できる人が生き残れる』とみたいな話をよくしていた。まさに花やしきも、時代の変化に応じて変わることが続いている秘訣(けつ)なのかな。今回、デジタル要素を入れたのもそのひとつ」と語った。
時代に合わせて、しなやかに変わり続ける浅草花やしき。来場者の歓声が、この日も響き渡っていた。