主人公の基羊介は、生きることに悩む人々をサポートする「保健予防課」に転職し、一筋縄ではいかない“悩める人々”と向き合う日々を送っている。その中で出会ったのが、高校生の頃から引きこもるようになり、生きる力を見失ってしまった留美。この女性を救うために、羊介は自身の仕事について見つめ直し、正解のない答えを求めて奔走する──実在する保健所の仕事に焦点を当てたリアルがあふれる衝撃作品『死にたいと言ってください —保健所こころの支援係—』!
自殺防止にあたる「保健予防課」という実在する仕事を描いた本作。人の命を懸命に救おうとする姿や、生きる力を見失ってしまった人々をリアルに描き、読者からは「少しでも生きたくなった」「こんな人に支えてもらえるとがんばろうと思える」など、共感の声を集めた。
作者は、2018年に『小人の住処』という読み切り作品で第79回ちばてつや賞準優秀新人賞を受賞後、2022年からは本作を双葉社漫画アクションで連載する、漫画家の中原ろくさん(@rokurockvi)。今回、この作品の魅力や創作の経緯などについて、中原さんに話を聞いた。また、本作の第一話も特別に紹介する。
身近な人を救うひとつの手立てとして
中原さんが、この作品を描こうと思ったのは、自身の経験が影響していると話す。「身近な人を惜しくも亡くした方は多くいらっしゃると思います。ですが、自ら命を絶つことについて聞くことがタブーとされていたり、この問題についてどうしたらいいのか語りにくい世の中だと思います。だからこそ、身近な人が生きる力を失ってしまったときに、どうしたらいいか考えていただくきっかけになればと思い、このテーマに選びました。また、以前私がこうした問題に対応する仕事に関わっていたこともあり、『その経歴をもとに漫画を描いてみないか』と担当編集に言われたことで、作品づくりがスタートしました」と、中原さん。
命をテーマとする作品であるため、随所で配慮しながら創作にのぞんだと中原さんは言う。「防止する方法が一つであるとか、これが正しいといった表現になるべくならないように気をつけています。実際、悩んでいる人の状況によって望ましい対応というのはケースバイケースになりますので、ただの押し付けにならないようにとは思っています」。こうした配慮が、多くの読者に共感を呼ぶ魅力になっているのだろう。
多くの読者に楽しく読んでもらいたいという気持ちと共に、中原さんは「できればもっとたくさんの方に作品を読んでいただきたい。大切な人から相談された時に、否定したりはぐらかしたりせずに話を聞いてあげて、家族、友達、自治体、医療機関などまわりを巻き込んでどうしたらいいかをみんなで一生懸命考えることが当たり前な社会になってほしいなと思っています」と語ってくれた。これほど強い思いで描かれたからこそ、多くの読者の胸に届く作品になったのだろう。今後も見守り続けたい。
<中原ろくさんInformation>
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